令和6年6月22日(土)13:30~16:00
岡山国際交流センター
管理人は、かつて「南紀熊野観光塾」で観光学について集中的に学んでいた頃に、同氏の「新・観光立国論 」を読み、大いに感銘を受けたことがありました。
非常にハッキリ指摘していて、分かりやすかったです。
その後、同氏は、菅義偉政権下で「成長戦略会議」の議員に起用され、観光や経済政策を中心にブレーンとして活躍されました。
そんな同氏の講演会が岡山県で企画されると「X(エックス)」で知り、
最先端の話が聞ける!
と感じ、すぐさま登録したのでした。それはもはや、
楽しみしかない
今月の本業が、かつてないほど多忙だったこともあり、「心のオアシス」として数日前からソワソワしておりました。そこで、情報の整理を含め講演会内容を抄録にまとめてみました。
※管理人である山城Qの理解の範囲での抄録となります
場所:令和6年6月22日 岡山国際交流センター2F
講師:株式会社小西美術巧芸社 代表取締役社長 デービッド・アトキンソン氏
文化財の活用と維持 ~遺していくための伝統技術~
かつての伝統技術業界
日本で考えられている伝統文化とは畳文化・お茶文化など、かつてほどは無くなった物の意味に近い。
伝統技術とは、本来は日常的なモノであるのに、神格化され、美化され、特別視されている。結果、不幸なことに孤立し閉鎖的になる。職人への特別意識は間違いであり、逆にそれが伝統文化の衰退につながっている。
かつて昔の職人は、非常に短命であった。例えば平安時代だと40代という技術的体力的に絶頂期に亡くなるケースが多かった。しかし、現代は長寿社会となり、高齢職人が人間国宝となるのは良いが、精神的体力的に衰えていく。
アトキンソン氏
職人も、若返りをしないといけない
70歳が60歳に技術を継承しても意味がない。また、技術を得るのに10年掛かるというが、それは10年を掛けて指導しているためであり、5年程度の短期間習得は十分に可能だと考える。
資格が好きな国民性なのに、国宝や重要文化財を修理するための国家資格がないため、やりっぱなしが当たり前の責任を持たない業界でもあった。
責任を持つ業界へ
かつて文化財に対する国家予算81億円しかなく、ほとんどが修理のための資金であった。
政府に増額を要求するためには、経済的合理性を追求しなければいけない。それは、
アトキンソン氏
広く国民に知ってもらう
ということ。国は修理には予算を全く割かないが、観光戦略に組み込むことで、予算を引き出せる。また、国民に説明するためには、自分達の仕事に責任を持たなければ説明することはできない。
学芸員の可能性
学芸員や博物館勤務者などは、思考として職人に近く、基本的に自分の世界や研究を追求している。かつては、その知識を国民に紹介するという考えがなかった。
しかし、これからの観光において最も可能性を秘めた職種であり、文化財の素晴らしさを国民や観光客に
来てもらう
感じてもらう
喜んでもらう
親しんでもらう
学んでもらう
ための十分な基礎知識を持っている。
そのために、文化財に対する紹介文・説明文の徹底活用を依頼している。
かつての二条城では、国宝であるのに「大広間をBIG ROOM」とだけ英文紹介していた時期があった。以後、改善努力する。特に、二条城の入場料を増額し、その資金を城内整備や人件費に充てるという好循環を生んだ。
結果、二条城は京都市内でも有数の観光地となった。
残る文化 労働生産性の追求
しかし、全ての文化や伝統技術を残すことはでない。むしろ不要な文化や伝統技術は残さなくてもよいとも考えるし、時代に沿ったものだけが残っていくとも考える。
そのためには、若返りが重要なポイントであり、チームワークを活かした活躍が今後に期待される。
アトキンソン氏
横のつながりが大事
パネルディスカッション
このあと、同氏を含めた
(公財)文化財建造物保存技術協会常務理事 稲葉敦氏
岡山理科大学建築歴史文化研究センター・客員教授 江面嗣人氏
ナイカイ塩業(株)代表取締役社長 野崎泰彦氏
らによるパネルディスカッションが企画されました。中でも文化財保護法の一文を引き合いに出し、
文化財を保存・活用することを目的とし、1950(昭和25)年に制定された法律
文化財保護法より
主役の国民に対して、分かりやすく説明紹介する義務があり、保存だけではなく、活用することが重要。特に印象に残ったフレーズは、
「観光のために文化財があるわけではないが、観光がないと文化財は活用できない。」
という部分でした。
ご挨拶してみる
講演会終盤に至り、管理人はだんだん緊張しておりました。それは、
ご挨拶してみようかなあ
ということです。講演会の休憩時に様子を伺うと、ひっきりなしに、おそらく「お偉い方々」が名刺交換をされていました。
逆に管理人は単なる一般人参加者ですので、名刺はあるものの、果たして良いのか悪いのか。
しかし、かつて「ビートたけし」が言っていた「学生時代には、有名人にどんどん会いに行け。学生なら会ってくれる」という言葉を、別に学生ではないですが思い出し、ご挨拶してみました。すると
アトキンソン氏
お~山城ね!
という「山城」という存在そのものをご存じという点に驚きました。
(山城を知ってる!?)
また、即座に
アトキンソン氏
全然、説明が足らないよ~
とおっしゃられました。なんでも、三島の山城(山中城?)に行かれたようですが、一面芝生ばかりで、紹介が全然ない。全く足らない。とのこと。
入口に大きな看板があるのですが、確かに芝生ばかりです。
ここはどこで、どうゆう役割があって、どう生かされたのかなどの説明はあまりありません。これらの不便さは、広大な敷地を有する山城全体に言えることです。
全体の課題
閉会後のバタバタした中での非常に短い時間でしたが、最後に
アトキンソン氏
ぜひ頑張ってください
という暖かい言葉もいただきました。
管理人が行っている山城巡り・X発信・ブログ公開は、本業とは全く関係のない完全に趣味の世界。
また、一般的に周辺からの理解も得られにくい孤独な作業ですが、管理人としては「ここに理解者が居る」ということに非常に感激したのでした。
ご挨拶して良かった
山城に置き換えると
国宝や国指定史跡で二条城のようにメジャーな近世城郭であれば、入場料も徴収し、国からの管理予算がつくでしょうが、逆に山城・廃城に至ってほとんどが入場料無料であり、存在意義を理解している地元の方々の管理に頼っている部分が多いと思います。
日々、当たり前のように山城に登っていますが、その維持管理にはたいへんな労力と人件費が掛かっていることは絶対に忘れてはなりません。
もし多少の余裕があるのなら、その土地にお金を落とす行動(おみやげ・食事・温泉入浴・宿泊)
さらに観光客・訪問者を引き寄せられる情報発信をもっと積極的に行い、
交流人口を増やせるよう努力し、
支え合うこと
が大事だと感じました。
改めて、山城に関わる各個人レベルで出来ることは色々あるなあと強く感じたのでした。
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