お城といえば、天守閣。 私も最初は、そう思っていました。
ところが、いくつもの城を巡るうちに、気になることが増えてきました。「天守がない城は、いったい何を見ればいいんだろう?」
その疑問から始まった山城歩きは、やがて石垣や土の遺構を見つける楽しさへ。そして、思いもしなかった古代山城の世界へとつながっていきました。
01|最初は、天守閣に夢中だった
姫路城の白い天守、松本城の黒い天守。大きな石垣と水堀を備えた城を見上げると、やはり圧倒されます。


もちろん、城ごとに姿も歴史も違います。でも、城を巡り続けていると、次第に別のことが気になり始めました。
「立派な天守ができる前の城は、どんな姿をしていたんだろう?」
調べてみると、山の頂や尾根を利用して築かれた、天守を持たない城が各地に残っていることを知りました。しかも、そこには石垣や建物がなくても分かる、さまざまな工夫があったのです。
02|山の中に、「土でできた城」があった
山城では、山の斜面を削って平らにした曲輪(くるわ)や、尾根を断ち切る堀切(ほりきり)などが見どころになります。
一見すると、ただの山道や平らな場所。でも、少し意識して歩くと「ここは人の手が入っているな」と気づく瞬間があります。

例えば、尾根道を歩いていると、堀を横切る細い通路に出会うことがあります。これは土橋(どばし)と呼ばれる遺構です。道として便利なだけでなく、人の通り方を限定する働きも考えられます。

山の斜面に何本も刻まれた溝も面白い。畝状竪堀(うねじょうたてぼり)と呼ばれる遺構は、山の地形そのものが城の一部だったことを教えてくれます。

何も知らずに歩けば、ただの森。でも、遺構を一つ見つけると、そこから先の景色まで違って見えてきます。
03|歩くほどに、造り手の工夫が見えてくる
山城歩きに慣れてくると、今度は「なぜ、ここにこの遺構を造ったのだろう?」と考えるようになります。
狭い尾根道の先に曲輪がある。大きな堀切が道を断つ。門へ向かう道が曲げられている。どれも、山の地形を見ながら工夫した結果なのかもしれません。

「もし自分がここを登ってきたら、どう見えるだろう?」
そんなことを想像しながら歩くと、ちょっとした探検気分になります。ただし、遺構の役割や築かれた時期は、見た目だけで決めつけられるものではありません。考える楽しさと、確かめる面白さがあるのです。
そして、山頂近くで思いがけず大きな石垣に出会ったときの感動は格別です。

「こんな山の上に、どうやって石を運んだんだろう?」
さっきまで登り坂で息を切らしていたのに、気づけば石垣を見上げて夢中になっている。山城を歩いていて、私がいちばん好きな瞬間の一つです。
04|その先で、古代山城に出会った
縄張り図を描いて、城のつくりを詳しく調べる楽しみ方もあります。一方、私が気になったのは、登城途中で景色が切り替わる場所や、なぜか中途半端に見える構造でした。
「なぜ、ここに門があるのか?」「なぜ、ここで道を曲げたのか?」。そんな疑問を追いかけていると、自然と、もっと古い時代にも目が向くようになりました。
山城を巡るうちに、もう一つの疑問が生まれました。
「中世の山城より、もっと昔の城はどうだったんだろう?」
その問いを強く意識するきっかけになったのが、岡山県総社市の鬼ノ城(きのじょう)です。備中松山城を訪ねる旅の途中で、立ち寄りました。

そこにあったのは、それまで見慣れてきた中世山城とは、まるで違う景色。山を大きく取り囲む城壁、門、そして広い内部空間。
「これも同じ『山城』なのか!」と驚きました。
古代山城は、築かれた時期も構造も、場所によってさまざまです。何のためにつくられたのか、今も考える余地のある遺構もあります。その違いを確かめながら現地を歩くと、山城の世界がぐっと広がります。
山城は、歩くほど面白くなる
最初は、見上げるだけで感動した天守閣。
そこから土塁や堀切を探すようになり、いつしか道の曲がり方や門の位置まで気になるようになりました。そして古代山城へ。
でも、山城を楽しむために難しい知識は必要ありません。森を歩いて、変わった地形を見つけて、景色に出会う。それだけでも十分に楽しいのです。
帰りには温泉に立ち寄って、今日見つけたものを思い返す。そんな一日もいいものです。
歩く。発見する。楽しむ。山城って、楽しい。
気軽な山城歩きの楽しみ方は、「山城ウェルネス」でも紹介しています。
※山城には急斜面や道が不明瞭な場所もあります。天候・立入規制・現地の登城ルートを確認し、無理のない計画でお楽しみください。

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