岐阜

苗木城(岐阜県中津川市)|「苗木・上松花崗岩帯」と巨岩異形の山城

山城ウェルネス

山城ACTレベル:中級(★★☆)
登城路は整備されており、石段や岩場が続く区間もあります。
高所の展望部もあり、足元と高度感に注意しながら見学しましょう。

山城Wレベル:W3(★★★)
城内の導線は単純で、要所が段階的に現れるため構造を追いやすい造りです。
巨岩・石垣・眺望が重なり、歩行の流れの中で「城の要」が自然と掴めてきます。

主なルート
登城口 → 尾根道 → 曲輪群 → 本丸跡 → 周回・下山

所要時間:1時間00分

アクセス・駐車場

  • 車:中津川ICから国道19号 → 国道257号経由で約10分
  • 駐車場:苗木城跡第一駐車場(ほか複数あり)
  • 公式地図:中津川市観光サイトの案内図を参照

現地レポート

苗木城の登城口付近の石垣と坂道
苗木城の登城路と石垣のようす

(初動分岐型)大矢倉

ほぼ、これを観たかったといっても過言ではありません。この岩の造形物を写真で見たとき、ショックを受けました。

山城Q
山城Q

ここは日本だよね??

という感じです。自然岩と石垣が見事に調和した構造で、特に注目されています。岩の形状や積み方が多様で、布積みや打ち込みハギなど、職人の技が光りますね。

大矢倉周辺の石垣と巨岩
別角度から見た大矢倉の石垣
自然岩の上に積まれた石垣の様子

別の角度から。一枚上とは積み方が違いますね。布積みっぽい雰囲気です。

積み方の異なる石垣のディテール
大矢倉周辺の石垣ディテール

いろんな積み方があります。

自然岩と石垣が組み合わさった部分

天守の方を見ると

天守方向を見上げる石垣
小ぶりな石を丁寧に積み上げた石垣
天守台周辺の石垣全景

苦労して積んだんでしょうね。わりと小さい石で丁寧に積んでいます。

野面積みと整った石垣が混在する箇所

散策し始めて、まもなく本丸下の石垣に出ます。息は整い、足取りも安定してきた頃で、視線が自然に上へ向きますが上の様子はまだ見えません。

ここから先は、さらに上がる必要があります。

下部が野面積み・上部が整った石垣に見える部分

下は野面積みですが、上は打ち込みハギのように見えます。その間に、大きな岩石を散りばめる構造が印象的です。

異形天守展望台の木組み

異形天守展望台の木組み全景
異形天守展望台の木組みディテール
巨岩の上に組まれた展望台の木組み

この日、天守の木組みを詳しく撮りたかったのですが、他に「バードウォッチング」グループがおられまして、あんまり撮影が出来ませんでした。

天守からの眺望

天守展望台から望む中津川の街並みと山並み

それぐらい高所です。

大矢倉を上方から撮影

上方から見下ろした大矢倉の石垣

大矢倉を上方から撮影。これが撮りたかったわけです。

この「石垣の塊」は、もはや日本のモノとは思えません。ここを抜かれると天守まではすぐですから。頑固に造る必要があったのだと思います。

この城の要は、この「大矢倉」に掛かっているといっても良いのかもしれません。

この城の概要

苗木城は、岐阜県中津川市苗木に位置する戦国時代の山城で、遠山氏の本拠地として築かれました。

木曽川北岸の標高約432mの城山(高森山)にあり、自然の巨岩や険峻な地形を活かした石垣と天守台が特徴の天然要害です。

大永年間(1521〜1528年頃)に遠山昌利(一雲入道)により移築・築城され、江戸時代まで遠山氏が12代にわたり支配し、明治維新後に廃城となりました。

地形・地質のポイント|「苗木‐上松花崗岩」帯は宝の山!?

苗木城周辺の地質区分図(苗木‐上松花崗岩帯)
引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日),https://gbank.gsj.jp/seamless より山城渡りQが加筆・修正したものである(スマホで拡大可能)

地質図を見てみると、木曽川に沿って形成された河岸段丘の上に城域が築かれています。木曽川は「苗木‐上松花崗岩」を貫いて流れており、南部(黄色・薄緑)は堆積岩層です。

城がある場所は花崗岩層であり、あのような花崗岩巨石ができた背景には、この地質帯の存在があります。まさに「良い場所に城がある」と感じさせられます。

しかし、もう少し全体を見てみる必要があります。実は、この場所は――

濃飛流紋岩帯の広がりを示した地質図

ちょっとわかりづらいですが、恵那山付近から北西端にあたる白川村地域にいたる広大な地域に分布する巨大な火山岩帯の一角に位置しています。

山城Q
山城Q

濃飛流紋岩(のうひりゅうもんがん)

「濃飛流紋岩」とは?

1. 火山岩の一種

  • 主成分は流紋岩(リュウモンガン、英語:Rhyolite)で、火山噴出物の中でも高シリカ質の酸性火山岩に分類される。
  • 粘性が高く、火山活動によって粘度の高いマグマが地表に流れたり、爆発的に噴出して堆積したもの。

2. 地質的背景

  • 主に白色〜淡灰色で、細粒〜微粒なガラス質やクリスタルが混ざっている。
  • 岐阜県飛騨地方や濃尾平野周辺に広く分布し、古第三紀〜新第三紀の火山活動に由来するとされる。

3. 岩石の特徴

  • 多孔質や気泡構造が見られることもあり、火山噴出物の特徴を示す。
  • 硬くて風化しにくく、建築材や石垣材料としても利用される。

濃飛流紋岩は、流紋岩と呼ばれますが、実際は溶結凝灰岩であり、火砕流堆積の産物となります。

わずかに分布する「苗木ー上松花崗岩」は、巨大な一枚岩状の花崗岩体で、地質学的には「花崗岩帯」として分類されています。その縁にあたる場所に苗木城が築かれている、というわけです。

山城Q
山城Q

この地域でも太古に超大爆発があり、
コールドロン(陥没盆地)を形成した!?

コールドロン(cauldron)とは、地殻内でマグマの移動や噴出に伴って形成される陥没構造(カルデラ)や複雑な火山性変形構造を指す専門用語です。

ただし、通常の「カルデラ(caldera)」と区別して使われる場合もあり、より構造的に複雑で内部にマグマの貫入やドーム形成を伴うものを指します。

この山城の魅力|3つのポイント

① 体験価値(ウェルネス)
木曽川を見下ろす静かな登城路は、歩くほどに気持ちがほどけ、自然の中に戻るような時間が流れます。短時間でも「山に来た」と感じられる、ほどよい登りです。

② 遺構の固有性
自然岩と石垣が融合した「大矢倉」や、岩盤上に組まれた独特の天守台が、この城だけの存在感を放ちます。巨岩そのものが防御線になっていることを、目で実感できる山城です。

③ 景観・地形の固有性
山頂から望む中津川の街並みや恵那山方面の眺望は、川と段丘と町並みが一望できる景観です。木曽川の流れと人の暮らしが、重なって見えてきます。

周辺観光・温泉(地域共鳴)

温泉

かすみ荘(ラジウム温泉)

  • 距離:車で約6分
  • 特徴:静かな日帰り湯。登城後に立ち寄りやすい距離感です。
  • 補足:営業時間・料金などは公式情報(現地掲示/公式サイト等)を参照してください。
  • 歴史:昭和39年創業。地域住民に長く親しまれてきた日帰り湯です。

※本記事は入浴による効果・効能を断定するものではありません。体調に不安がある場合は無理をせず、必要に応じて医療機関等の指示を優先してください。

グルメ

中津川名物「栗きんとん」は、登城後の軽い甘味補給としてぴったりです。和菓子店で地元の味を楽しめ、散策の締めにも向いています。

名所

馬籠宿(中山道の宿場町)は、石畳の道と歴史的な建物が残る風情あるスポット。苗木城と組み合わせて巡れば、歴史と自然の二層を楽しめる旅になります。

主な出典

出典:『日本城郭大系』、岐阜県・中津川市の文化財資料、産総研地質調査総合センター「日本シームレス地質図」、国土地理院地形図 ほか

免責

本記事は、現地での観察メモをもとに整理し、筆者なりの解釈を加えた記録です。史実の正確性を保証するものではありません。また、整備状況・所要時間・交通手段・施設情報等は変更される可能性がありますので、訪問の際は必ず最新情報をご確認ください。

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