滋賀

小谷城(滋賀県長浜市)|黒鉄門は、なぜ「あの位置」に築かれたのか?

ACTレベル:★2(中級寄りの初級・ゆっくり約3時間コース)

この山城の魅力|3つのポイント

① 体験価値(ウェルネス)
なだらかな山道から始まり、黒金門を越えたあたりから一気に「場の空気」が変わる山城です。前半は森を歩く散策モード、後半は大堀切と大石垣に圧倒される“戦国ジオ・トレイル”として、心と身体のスイッチが段階的に切り替わっていきます。

② 遺構の固有要素
戦国庭園・御馬屋跡・本丸裏の大堀切・山王丸裏石垣・大石垣など、チャート石を活かした石垣群と大規模堀切が連続し、「中腹までは土の城、上部は石の城」という二層構造を体感できます。

③ 景観・地形の固有性
混在岩の尾根上に築かれた城で、とくにチャート層に乗る上部は岩の存在感がぐっと増し、視界も一気に開けます。山麓の虎御前山砦や琵琶湖方面を見渡す眺望は、「平地・湖・山城」が一枚の絵になるダイナミックな地形体験です。

山城Q
山城Q

この城、途中から雰囲気が一変します

現地レポート|ルートと見どころ

尾根構造と曲輪配置
山腹までは比較的なだらかな尾根に広い曲輪(御茶屋跡・御馬屋跡など)が並び、上部に向かうにつれて尾根が細くなり、大広間〜本丸〜山王丸へと段々に曲輪が積み重なる構造です。

大堀切とチャート石垣
本丸背後には幅約20 m級の大堀切が掘り割られ、この土木作業で大量のチャートが得られたと考えられます。そのチャートが本丸周辺の大石垣や山王丸裏の石垣に活かされている点が、小谷城ならではの“ジオ的なおもしろさ”です。

入口~御馬屋跡まで

出丸跡

基本的には、なだらかな山登り道です。

金吾丸

番所跡

虎御前山砦 を望む

小谷城の正面に位置する丘。織田軍の小谷城攻めにおける前線砦群がある。近いなあ。

御茶屋跡

御茶屋跡があったり、なんとなく雰囲気もまったり。

戦国庭園

個人的に戦国庭園に興味があります。なんというか豪快というか力強さを感じることが多い。山梨の要害山城でも、本丸に似たような雰囲気の庭跡がありました。

御馬屋跡

実際は、立派な曲輪で土塁もあります。この下は、御茶屋跡がありますので、重要な防衛拠点なんだと思います。

馬洗池

実際に水がありますし、ここまで馬で来られたってことなのでしょう。

「首据石」、くびすえいしと読むのでしょうか。ちょっと、雰囲気が変わって来ました。

黒金門付近

眺望

大広間跡から山王丸まで

本丸跡は この上

ここにきて、ようやく立派な石垣が登場します。チャート石が豊富にあるからでしょう。チャートは非常に硬く、加工が難しいと思います。

本丸裏の大堀切

何やらチャート石がドンドン増え始め、本丸裏の大堀切に繋がります。ここは広いです。横幅約20m程度。ここの土木作業で大量のチャートが出てたはず。

中の丸

京極丸から小丸を経て

山王丸

山王丸裏にもきちんと石垣があるので、これを見逃すにはもったいない。

目当ての大石垣

かなりの迫力!

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

地図でもお示しの通り、中腹以上にチャートが産出するので、本丸やここに石垣を造ったのは、以下には岩石が適さなかったのかもしれません。近場の山本山城や虎御前山砦には、石垣らしい石垣はありませんでした。

詰の城 大嶽城 はまだこの先

時間的に余裕が無かったので、詰城の大嶽城はまたの機会に。是非とも登城してみたいものです。

アクセス・駐車場

  • 登山口の位置
    小谷城戦国歴史資料館周辺が主な起点になります。資料館から登山道に入る大手道コースが一般的で、案内板もしっかり整備されています。
  • 駐車場
    • 小谷城戦国歴史資料館近くに来訪者用駐車場あり。
    • さらに上部に中腹駐車場も整備されており、体力や時間に応じて駐車位置を選ぶことができます。

この城の概要

小谷城は、戦国大名・浅井長政の居城として知られる、日本五大山城のひとつです。

尾根上に金吾丸・大広間・本丸・中の丸・京極丸・山王丸などの曲輪群が連なり、山頂付近にはチャート石を用いた大石垣と本丸裏の大堀切が残ります。日本100名城にも選定されており、山全体が巨大な戦国山城のフィールドミュージアムになっています。

~参考~ 日本五大山城
1.春日山城(新潟県)

2.観音寺城(滋賀県)

3.小谷城(滋賀県)

4.月山富田城(島根県)


5.七尾城(石川県)

山城ACTレベルと山城Wレベル

山城ACTレベル:★2(中級)
標高約495mで、全体の歩行時間は寄り道込みで3時間前後のしっかり歩く低山ハイクです。前半は緩やかな山道と広い曲輪が続き、後半になるほど傾斜が増して段々曲輪と石垣帯が集中します。

距離と累積標高差はそれなりにあるものの、ウォーミングアップしながら負荷を上げていける構成のため、中級(★2)としました。

山城Wレベル:W3(深)
戦国庭園・御馬屋跡・本丸裏の大堀切・山王丸裏石垣・大石垣と、見どころが段階的にスケールアップします。チャート石の質感と色味が尾根道で変化し、歩くほど環境そのものに没入していく体験が強まります。

終盤の石垣帯で「場の空気がガラッと変わる」深い没入感が生まれるため、W3と判断しました。

主なルート
小谷城戦国歴史資料館登山口 → 御茶屋跡 → 御馬屋跡 → 金吾丸 → 黒金門跡 → 大広間跡 → 本丸・中の丸 → 京極丸 → 小丸 → 山王丸・大石垣
往復約3時間(寄り道多めで+30〜60分)

累積標高差・所要時間
歩行距離:約5.5〜8km(ルートにより変動)
累積標高差:約500m前後

地形の特徴
前半は緩斜面主体の尾根道、後半は段々曲輪と石垣帯が集中。大堀切や急斜面の縁では足元への意識が必要。

注意点
後半は段差が大きい箇所やぬかるみやすい斜面があり、特に石垣や堀切付近では写真に集中しすぎると危険です。

一言補足
長丁場ですが変化が多く、コースに飽きにくいのが小谷城の魅力です。

地形・地質のポイント

「そこに築かれた必然性」

山腹部の比較的やわらかな地質には土の曲輪を広く展開し、チャートが豊富な高所にだけ石垣を集中させることで、「資源を最小限に抑えつつ最大の防御効果を狙った山城」としての合理性が感じられます。

特に「黒金門跡」から上部

登城中、突然、岩石がちらほらしてきて雰囲気が変わります。

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)
山城Q
山城Q

小谷城の「黄色い部分」

この辺りは、混在岩で、ちょうどその部分に城が築かれております。特に面白いところは、「チャート層」なんです。岐阜城と同じ。位置的にも合っていて、つまり、そこには

「黒金門」が存在するのです。なぜ、突然この門が出来たのか合点がいきます。

周辺観光・温泉(地域共鳴)

温泉|北近江リゾート「北近江の湯」(車で約25〜30分)

小谷城から北へ向かうと、中高年ハイカーでも立ち寄りやすい大型温泉施設「北近江の湯」があります。地下1500mから湧き上がる天然温泉で、露天・ジャグジー・サウナが揃い、登城後のクールダウンにちょうどいい落ち着きがあります。駐車場も広く、ゆっくり体を休められるのが魅力です。

グルメ|道の駅 浅井三姉妹の郷(約15分)

地元食材を使った定食や軽食が揃い、登城前後の腹ごしらえに便利。甘味処もあり、歩いた身体をやさしく回復してくれます。

名所|虎御前山砦(小谷城の対面)

小谷城と向かい合う戦略的な丘陵で、斜面配置と見晴らしが特徴。小谷城の姿を対面から眺められるため、セット訪問に適しています。

まとめ

  • 初心者・中高年ハイカーに向く理由
    • メインルートはよく整備された登山道で、案内板も多く迷いにくい。
    • 前半は緩やかな登りと広い曲輪が続き、ウォームアップをしながら高度を上げていける。
    • 距離と時間はやや長めですが、ペース配分を意識すれば「少し背伸びしたい低山ハイク」として楽しめます。
  • ウェルネス総括
    小谷城は、森の静けさと戦国遺構の迫力、そしてチャート石がつくる独特の地形が、段階的に心と身体のモードを切り替えてくれる山城です。
  • 登りながら歴史や地質に少しだけ思いを巡らせ、下山後は北近江の湯で身体を温める――そんな一日が「仕事モードから離れて、自分のペースを取り戻す時間」になってくれます。

主な出典

  • 長浜市公式サイト「小谷城跡」
  • 小谷城戦国歴史資料館 現地案内板・配布資料
  • 産総研 地質調査総合センター「20万分の1日本シームレス地質図V2」

免責

本記事は個人的な体験・調査に基づくものであり、歴史や効果を断定するものではありません。訪問時は最新情報をご確認ください。

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