岐阜

飛騨松倉城(岐阜県高山市)|飛騨を見晴らす織豊系山城

山城ACTレベル:初級 ★☆☆ 山城Wレベル:W2 ★★☆

飛騨松倉城 主郭石垣と曲輪の全景

この山城の魅力|3つのポイント

① 体験価値(ウェルネス)
急な登りはあるものの距離は短く、呼吸と足のリズムがすぐに整っていくことで、自然と「歩く冥想」に入る感覚が生まれます。

② 遺構の固有性
主郭周辺には濃飛流紋岩の野面積み石垣が連なり、長辺材を横に用いた積み方に、織豊系らしい雰囲気がにじみます。

③ 景観・地形の固有性
松倉シンボル広場から短時間で展望台へ抜ける立体的な地形が、登り終えた瞬間の達成感を自然に引き出します。

現地レポート|ルートと見どころ

飛騨松倉城 登城口付近の石垣と山道

駐車場がありますので、さっと停めて道順で登ります。

飛騨松倉城 駐車場と案内板付近の様子
飛騨松倉城 登城道入口付近の遊歩道

石切り場でしょうね

飛騨松倉城 登城道脇の石切り場跡

手前に堀切があったのでしょうね。

飛騨松倉城 堀切跡と思われる窪んだ地形

20分ぐらい登れば

飛騨松倉城 主郭手前の登り坂

搦め手から入り、主郭周辺石垣へ

滋賀の安土城と似ている点

飛騨松倉城 搦手側から見える主郭石垣

見えてきました。見えてきました。

飛騨松倉城 搦手登城路から見上げる石垣

搦め手から登ることになりましたが、なんとも豪快です!

飛騨松倉城 主郭下の巨岩と石垣
飛騨松倉城 主郭周辺の石垣帯

大きな岩石は「見せるため」に置いている。とも考えられます。

飛騨松倉城 濃飛流紋岩の野面積み石垣

濃飛流紋岩による野面積み。しかも、この長辺岩を横に並べる積み方は、どこかで見たことがありますね

山城Q
山城Q

安土城

滋賀 安土城 黒金門正面の石垣
滋賀 安土城 黒金門正面

野面積みは全国各地にありますが、この長辺岩を使い方などは、雰囲気が似ている気もします。加えて、濃飛流紋岩は「溶結凝灰岩」です。安土城に使われている湖東流紋岩も同じ「溶結凝灰岩」。

山城Q
山城Q

岩質が同じなら、積み方も似てくるのかもしれません

飛騨松倉城 主郭石垣を正面から望む

この無骨な感じが最高!

飛騨松倉城 主郭曲輪内の様子
飛騨松倉城 主郭背後の石垣と巨岩
飛騨松倉城 主郭周辺の段々状曲輪

徳島県の一宮城にも似ている

感じたことは、

山城Q
山城Q

山頂部にドンと置かれた感じがする

ことです。

もともとは、平坦地だったか多少の石垣はあったのかもしれませんが、この石垣は、完成度がかなり高いように思います。総石垣の造り方を熟知している者がさっさと造ったという感じ。

似たような印象を受けたのは、徳島の一宮城の主郭周辺石垣。あちらは、蜂須賀家が改修し、石垣を築いたようです。

特に、主郭への登り口は、非常に傾斜がきつく「急拵えで造りました」という印象を受けました。

この松倉城も金森家が改修を行ったと聞きます。松倉城も一宮城も同時期に織田家家臣が改修を行っているので、なにやら共通点があるように思えます。

二ノ丸 旛立岩 

飛騨松倉城 二ノ丸の旛立岩を見上げる
飛騨松倉城 二ノ丸 旛立岩周辺の石垣

なんとも大きな旛立岩。この上に登ってみたいところ

飛騨松倉城 旛立岩の近景

この辺りの石垣は、また雰囲気が違う気がします。主郭周辺と比べると、ディテールが違うことに気が付きます。

飛騨松倉城 二ノ丸付近の石垣ディテール

二ノ丸と大手門跡

飛騨松倉城 二ノ丸と大手門跡の石垣

眺望

飛騨松倉城 二ノ丸から望む飛騨の山並み
飛騨松倉城 主郭からの眺望と山々
山城Q
山城Q

残雪の山最高~

そして、本丸へ

飛騨松倉城 本丸虎口付近の石垣
飛騨松倉城 本丸曲輪内部の様子
飛騨松倉城 本丸から見下ろす城内地形

アクセス・駐車場

登城口は「松倉シンボル広場」横に整備されており、数台分の無料駐車が可能です。
JR高山駅からはタクシーで約10分ほど。バス利用時は最寄り停留所から徒歩移動となります。
トイレは麓側に限られるため、市街地で事前に済ませると安心です。

この城の概要

飛騨松倉城 主郭石垣と曲輪の様子

飛騨松倉城は、飛騨国の要衝を見下ろす山上に築かれた戦国期の山城で、三木氏の居城として知られています。
主郭周辺には金森氏改修期の影響とされる石垣が残り、山頂に石垣を配した織豊期的構成が際立ちます。

山城ACTレベル 山城Wレベル

山城ACTレベル:初級 ★☆☆
山城Wレベル:W2 ★★☆

山城ACTレベル
標高857mに位置する山城ですが、登り始めからの標高差は120〜150mほどと軽めです。
歩行距離は往復1.5km前後で、短い急登はあっても全体の負荷は大きくありません。
アクセス性が高く、自分のペースで無理なく歩ける初級クラスと判断しました。

山城Wレベル
短距離ながら主郭石垣と尾根上の開放感がセットで味わえ、没入への切り替えが早い山城です。
登り下りのリズムと石垣際の緊張感が交互に現れ、適度な集中状態が続きます。
短時間の行程でも心地よい達成感が残るため、W2としました。

主なルート
・登山口 → 主郭石垣(往復40〜60分)

累積標高差と所要時間
累積標高差:約120〜150m / 所要時間:約40〜60分

地形の特徴
短い急登と尾根状の登城路に石垣帯の段差が組み合わさる構成。

地形・地質のポイント

城域は濃飛流紋岩帯上に位置し、巨岩と岩盤が連続する山頂地形の上に築かれています(濃飛流紋岩=火山活動由来で硬く風化しにくい岩石)。

苗木城でもお話しした

山城Q
山城Q

濃飛流紋岩帯

濃飛流紋岩帯の分布図と飛騨松倉城周辺の位置
引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

その北部にあるのが、飛騨の松倉城です。

飛騨松倉城周辺の地質図と位置関係
引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

つまり、岩石は割と豊富にあるだろうと想像が付きます。

周辺観光・温泉(地域再生)

温泉|高山グリーンホテル 天領の湯
松倉城から車でアクセスしやすい日帰り入浴施設。泉質は単純温泉(低張性弱アルカリ性低温泉)で、やわらかな肌あたりが特徴です。
一般的な適応症として、神経痛・筋肉痛・冷え性・疲労回復などが挙げられており、登城後のクールダウンにちょうどよい落ち着いた湯処です。

グルメ|飛騨高山の和定食
高山市街の定食店では、焼き魚や小鉢付きのやさしい和定食が楽しめます。歩いた後の身体に無理のない、穏やかな食事時間になります。

名所|高山陣屋
江戸期の代官所跡で、松倉城と対比させると「山の要塞」と「町の統治拠点」の関係が立体的に見えてきます。短時間でも立ち寄りやすい歴史資源です。

まとめ

飛騨松倉城は、アクセス良好で短時間でも山城の魅力を体感できる、初心者・中高年にもやさしい山城です。
濃飛流紋岩の無骨な石垣と、山頂にドンと置かれた主郭の量感が、この城ならではの記憶として残ります。

免責事項

本記事は個人的な体験・調査に基づくものであり、歴史や効果を断定するものではありません。訪問時は最新情報をご確認ください。

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