山形

【山形県】長谷堂城 難攻不落 直江兼続と”山体崩壊”

基本情報

 形態:山城
 標高:229m
 城の整備:駐車場、登城道あり
 所要時間:約1時間
 訪問日:2013年8月

駐車場 アクセス

地質 周辺環境

西国から、遥か遠くまでやってきたものです。とにかく遠かった。しかし、ここは関ヶ原合戦の折、西軍の上杉景勝軍が、東軍の最上義光軍を侵攻した「慶長出羽合戦(長谷堂城の戦い)」でも有名な場所。

特徴的な形の山城ですが、周辺の地質を見てみればちょっと面白いことに気が付きました。

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

これを見ただけでも、お分かりの方がいるかもしれません。ちょっとおかしいところがあります。実際に、「長谷堂城」自体は、立派な河岸段丘ですが、その周辺の地質は、

山城Q
山城Q

岩屑(がんせつ)なだれ堆積物

とあります。「岩屑(がんせつ)なだれ堆積物」ってどういうことなのか。。。なだれ??どっかから土砂が「なだれ」のように流れてきたというわけです。少し西に目をやりますと

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

この赤枠の部分です。この部分は、明らかにエグレタ感じに見えます。そして、この赤枠内部だけ地表で近くで急速に固まった「玄武岩」が存在し、何か火山活動があったように見て取れました。

調べてみますとこれは、

山城Q
山城Q

”山体崩壊”跡

とのことです。

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

つまり、約4万年~7万年前に起こった「鳥兜山」~「滝山」~「横倉岳」にかけて径2.5kmの山腹が大きく崩壊。崩壊した堆積土の全量は2、3立方キロメートル。

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

黒線辺りまで、土砂が流れてきたというわけです。なんとすごい。また、この「岩屑(がんせつ)なだれ」では、コロコロと岩石が転がり、その末端へ移動し、何かのキッカケに伴い「はなれ山」という小高い丘山を形成。

ちょうど長谷堂城ある場所は、「岩屑(がんせつ)なだれ」の端であります。その堆積層には名前が付いており、地域の名前から「酢川岩屑流堆積物」と言うようです。

周辺は「酢川岩屑流堆積物」ですので、これは「はなれ山」の一部であるのではないだろうかとも考えます。(河岸段丘が先か、山体崩壊が先かは不明ですが)

山城Q
山城Q

はなれ山は、時間が経つと丸くなるらしい

参考:日本火山学会第五回公開講座 山形大学理学部教授 大場与志男氏

岐阜県に「帰雲城」という城があります

それにしても、このような”山体崩壊”は他地区でも聞いたことがあります。それは、

山城Q
山城Q

岐阜県 帰雲城

岐阜県 帰雲(かえりくも)城

すごくメルヘンな名前で、個人的に気に入ってます。

1586年(天正13年)の天正地震による山崩れで、城と城下町が全て埋没し、城主だった「内ヶ島氏」は滅亡。しかも実際に、どこにあったのか場所もよく分からない「幻の城」。それが「帰雲城」。

こう見てみると、土砂がガサっと滑り落ちています。実際は、”山体崩壊”による”山津波”で滅亡したのでしょう。埋蔵金のウワサもあり、これぞまさに

の世界。

縄張り図 現地看板

現地案内板
現地案内板
現地案内板

現地看板は、豊富です。「直江兼続を退けた」と大きく書かれています。

遠望

標高は229mですが、比高は90mですので、小高い丘という感じ。しかし、岩石で覆われているわけではなく、パッと見攻略が難しい城には思えません。

しかし、あの直江兼続が落とせなかった「難攻不落の城」とされているのですから、守りやすいのだと思います。これに似た丘城では、熊本の「田中城」が近い。ここも土壌は違いますが、独立した丘城です。

「長谷堂城の戦い」 長谷堂城 比高90m 直江兼続軍 2万 VS 志村光安軍 1千

「田中城の戦い」   田中城 比高47m   豊臣軍 1万 VS 和仁軍 1千

共に兵力差は10倍以上ですが、総攻撃でも落ちなかったということは、攻め入る場所が少なく守りが固かったということでしょう。

山城Q
山城Q

熊本の田中城が好きなのです

城域に入る

水堀

この手の丘城では、堀が重要です。

八幡口

神社やお堂がありますので、今回は、「八幡口」より入ります。

帯曲輪群

確かに、段々になっています。しかし、これは「帯曲輪」と言ったでしょうか。普通は、このような斜面に竪堀はありますが、段々畑様は珍しいかもしれません。

土塁

最大の城内帯曲輪

横矢掛かり

あちこちに案内看板があり、丁寧に解説してくれます

主郭部

展望

独立した丘城なので、四方が見渡せます。

直江兼続本陣跡

虎口

庚申

最上三十三観音 長谷堂

御本尊は、十一面観世音菩薩 

名前の由来となっているのが、このお堂。すごく信仰心を感じます。

気づき

有名な「長谷堂城」ですが、城自体はシンプルな縄張りです。しかし、地形的に四方が見渡せ、段郭曲輪がいくつも作られており、周辺に水堀などもあったことから、「守りやすい城」だと感じました。

”山体崩壊”の副産物 蔵王温泉

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

山形県最大の温泉が「蔵王温泉」。”山体崩壊”が起き、大きく陥没した場所に蔵王温泉があります。標高900メートルの高所に位置する温泉地で、1000年余りの歴史があります。

特徴:

この温泉は、

山城Q
山城Q

珍しい「強酸性泉」

一言でいえば、「皮膚病の湯」です。東北地方に割と多いですが、他県では珍しいです。文字通りpH値が低く、酸性度の高い温泉。そのpHとは「2」。

抗菌力があるため、白癬症やトリコモナス膣炎、疥癬(かいせん)等に効果があります。たいへん刺激が強いので「ボディソープ」など体は洗わない方が良いです。

画期的なのは、特別な効果として「アトピー性皮膚炎」での適応症を持つことです。これは、「硫黄泉」と「酸性泉」の二つしか許可されていません。

泉質:

酸性泉

療養泉の一般的適応症

筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進、

泉質別適応症

アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症、

参考資料:温泉ソムリエテキスト 発刊2021年4月

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