山城ACTレベル:中級 ★★☆
山城Wレベル:W3 ★★★
※現在「殿の道」は石垣保護のためルート自粛制限中。

この山城の魅力|3つのポイント
① 体験価値(ウェルネス)
整備道から要害部へ進むにつれ集中と緊張が高まり、歩行に意識が切り替わります。御主殿で一度緩み、詰の城で再び引き締まるリズムが心地よく続きます。
② 遺構の固有性
御主殿の石垣・虎口から大堀切、金子丸・馬冷しまで、縦深防御が凝縮。硬質砂岩の野面積みが「北条流・山城石垣」を際立たせます。
③ 景観・地形の固有性
尾根上に連なる急斜面と岩盤露出が、防衛線の輪郭を明確に示します。本丸や山王台からは高尾山と関東平野の眺望が広がります。
現地レポート|ルートと見どころ

前回の2011年訪問を振り返る

活動フィールドが南西日本なのでなかなか来られないのが、こちら関東以北エリア。こればかりは仕方がない。
しかし、たまーーに、東京出張があるので、タイミングを合わせて今回はリベンジ。前回、2011年は、この敷地に入った瞬間から「謎の体調不良」に襲われるは、プチ心霊体験にも合うは、散々な目に。
そこで、今回は、例のあの場所には

近づかず、一路、山頂を目指すことにしました。
城域に入る

金子丸


道は整備されており、特に問題なく進むことができます。


途中に石積みも散見されます。
高丸

これ以上は進まないようにという感じ。
本丸周辺 地図

八王子神社

この「八王子城」という名前は、この「八王子神社」から来たものでしょう。西日本の人間にはあまりなじみがないので、ちょっと調べてみました。
八王子神社(はちおうじじんじゃ)は、スサノオ(牛頭天王)の八柱の御子神(八王子権現)を祀る神社である。八王子宮、八柱神社(やはしらじんじゃ)などとも言い、日本全国にある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
へーーー。そういえば、似たようなネーミングで思いつくのは、
山形の長谷堂城ですね。こちらも、かなり年季の入ったお堂があります。
こういうのをみると、山城って元々は神聖な場所が存在し、それを祭る人々がおり、やがて領主が目を付け、要塞化するというやっぱり「象徴」的な意味合いがあります。
小宮曲輪

それにしても、この城は、各地に丁寧に案内看板があります。非常に分かりやすい。それだけ、文献が残っているということなのでしょうね。


これはスゴイ迫力です。なんとも、気になる狛犬です。傍らの鬼?の表情がコミカルで面白い。なんという名前なのでしょうか。これは良いです。
本丸跡


本丸跡。でも

狭い!?
先ほどの、八王子神社にしろ、この本丸跡にしろ、スペースが狭い。
これは、来てみて感じたことです。対して、滝川城はかなり広大で、「これこそ、北条の城だ」という印象を受けたのですが、ここ八王子城の狭さを見て、ちょっと驚きました。
城域こそ広大ですが、居住スペースがこの程度だと、そんなに大軍が常駐することは難しいのではないでしょうか。
井戸跡

山城には重要な「井戸」です。これは、最近まで使われてた感じでしょうか。この場所が下が分岐地点となります。
一路、詰の城へ

本丸周辺から奥となると、急に道が悪くなる。高グリップ力の靴を履いているので、問題はないですが、岩石露出場とか苔が付いていて滑りやすいので、注意が必要です。

サクサク進みます。
馬冷し(こまびやし)地点


だんだん、普段の山城の雰囲気が出てきました。掘りきっていますね~。
やがて、詰の城へ


岩石がたくさん転がっています。これは、最後の抵抗用でしょうか。しかし、やはりここも

狭い
というのが感想です。
本命 詰の城裏の大堀切


これが見たかった。
だいたい、詰城の裏は、深い谷か大堀切で区切られている。10m×10mぐらいの堀切でしょうか。


特に、この大木は、阿吽のように左右にあります。ここまであまり人は来ないでしょうから、この苔むした感じがとても良いです。岩石が剥き出しの大堀切。工事は大変だったのではないでしょうか。
帰路に就くが、、、山城の本性に出くわす
詰の城裏の大堀切を見学したし、帰ろうとしたものの、来た道を再び戻るのも味気ないと感じた管理人は、別ルートで下山することを考えました。そこで、目に入ったのがこのルート。

たしか前回は、御主殿上の石垣群を下から登り、途中の「氏照腰掛石」らへんで満足し引き返した、道的にもショートカット出来て、なんか近そうだから良いやん。こっちへ行ってみよう。
という考えがアサハカでした。ここは山城。あらゆる防御設備があります。

この道って。もはや獣道。ここはルートマップに載せてはダメ。いくら高グリップの靴を履いているといっても、枯葉は滑ります。へばりつく様に歩く。引き返すのも面倒なので進む。

そして、極めつけは、この場所!

無理でしょ!!
岩石が通路側に出っ張っている。
そして、ちょっと下ったところに岩石通路。しかもやや斜面で枯葉が堆積。これは下手に飛び乗ろうものなら、出っ張った岩石が邪魔になり、着地に失敗し、滑落の危険性大。掴まるところもない。
本当に困った。
仕方がないので、枯葉を払いのけて、道を確保し、頼りない枝か根っこを摘まみながらゆっくり進むことに。
山王台

こんなところに碑があります。八王子城落城に際しての慰霊碑とのこと。ここまで、これを運ぶのってたいへん。合掌。といいますか、私も先ほどの道で危なかったですが。
氏照の腰掛石へ


この場所って、なんか落ち着く。狭い空間の背後に頑固な石垣。そして、この腰掛石。すごく雰囲気が良くて、やっぱり今回もちょっと座っていました。
この城の概要
八王子城は、後北条氏の北条氏照が深沢山の尾根上に築いた山城で、小田原城を支える西方防衛拠点でした。
天正18年(1590)、小田原征伐により豊臣方の軍勢に攻められて一日で落城し、その後廃城。現在は国指定史跡で、日本100名城として整備・公開されています。
出典・参照:八王子市公式サイト、日本城郭協会ほか
山城ACTレベルと山城Wレベル
山城ACTレベル:中級 ★★☆
標高445m・比高約240mで、管理棟から御主殿までは緩やかな整備道、本丸〜詰の城エリアでは急斜面や細尾根・岩場・堀切が続きます。全体として「ハイキング以上・本格登山未満」の負荷感で、中級レベル(★★☆)としました。
山城Wレベル:W3 ★★★
御主殿の石垣庭園、本丸の狭さ、詰の城裏の大堀切、山王台の慰霊碑や八王子神社など、「祈り」と「戦い」のレイヤーが折り重なる構成です。歩くほどに北条氏照の選択や落城の場面を具体的に想像しやすく、心情的な没入度も高いため、W3(★★★)と位置づけています。
主なルート
・管理棟 → 御主殿跡(石垣・庭園を見学)
・御主殿跡 → 金子丸・高丸 → 本丸
・本丸 → 詰の城 → 詰の城裏の大堀切 → 山王台 → 氏照の腰掛石 → 御主殿へ戻る周回ルート
累積標高差と所要時間
累積標高差:約240m前後 / 距離:約5km前後(周回) / 所要時間:休憩や見学を含めておおむね2.5〜3時間が目安です。
地形の特徴
約1億年前の砂岩・泥岩がつくる急峻な谷と細尾根の山塊で、露出した岩盤を生かして石垣・堀切・腰掛石などの防御線が連続する構成です。
地形・地質のポイント

近場の滝山城と岩層を比較しても違いがわかります。滝山城付近は、砂地であっても礫岩程度
しかし、八王子城付近は、海底で堆積物が作られており、

砂岩が豊富
な様子。滝山城の防御度に憂いた北条氏照が近場で適度な岩石がある山を探したら、ここになったというのは納得できます。
高尾山系と同様、約1億年前の海底で堆積した砂や泥が固まった地層が基盤となり、露出した岩盤が急峻な谷と尾根をつくることで、防御に適した地形が生まれています。
気づき
2011年の前回と今回の二度に渡った訪れ、見て回りました。
確かに、城域は広大で岩石マミレの山塊です。そこを巧みに石を積み上げ、堀切を作って防御を固めています。しかし、岩石の性質上、小粒であり、石垣を作る努力は感じますが、やはり北条は「土の城」に強みがあるように感じました。
西日本の山城と比較しながら登ると、各大名の強み・弱みを感じられると思います。
アクセス・駐車場
・駐車場:管理棟そばに無料駐車場あり(目安 9:00〜17:00)。観光シーズンは満車気味。
・公共交通機関:JR・京王「高尾駅」北口から西東京バスで「八王子城跡入口」または「霊園前」下車、徒歩15〜20分。
・登城口:管理棟〜御主殿跡は散策路、本丸・詰の城方面は登山道のため、山歩き装備がおすすめです。
周辺観光・温泉(地域共鳴)
温泉|京王高尾山温泉 / 極楽湯(高尾山口駅前)
高尾山口駅前にある日帰り温泉施設で、登山や城歩きのあとに立ち寄りやすいロケーション。泉質はアルカリ性単純温泉(低張性・アルカリ性・低温泉)とされ、肌あたりのやわらかいお湯が特徴。温泉法上の一般的な適応症として、神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性・疲労回復などが挙げられる。
休憩スペースも多く、中高年世代がゆっくり体を休めるのにも向いている。
【グルメ】高尾山 高橋家(高尾山口駅前・老舗そば処)
八王子城跡と組み合わせやすい高尾山エリアでは、ケーブルカー清滝駅前の老舗そば処「高橋家」が登山者に人気です。
天保年間創業の歴史ある店で、とろろを練り込んだ名物そばや麦とろ飯は、山歩きの後にエネルギーをやさしく補給してくれる一品です。
【歴史スポット】滝山城跡(同じく八王子市内の山城)
同じ北条氏照が拠点とした滝山城跡は、広大な曲輪と土の城としての防御線がよく残る山城で、八王子城との「土の城/岩の城」を比較しながら歩くと、それぞれの強みや築城コンセプトの違いがよく見えてきます。
まとめ
八王子城は、御主殿跡の石垣と庭園から山上の大堀切まで、「里山の史跡散策」と「本格的な山城ハイク」が一体になった貴重なフィールドです。
中高年の方でも、御主殿周辺だけなら比較的気軽に歩ける一方、本丸・詰の城方面に進めば、岩場と急斜面が続く「山城の本性」に触れる時間になり、心身ともに心地よい疲労と達成感が残ります。
岩を削って積まれた硬質砂岩の石垣、詰の城裏の大堀切、八王子神社や山王台からの眺望など、「岩の山城」としての個性がはっきりしている城なので、西日本の土の山城と比べながら歩くと、山城ウェルネスの楽しみが一段深くなるはずです。
免責
本記事は個人的な体験・調査に基づくものであり、効果や歴史を断定するものではありません。訪問時は最新情報をご確認ください。








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