― 歴史 × 自然 × 身体活動の“周遊力”を観光学で読み解く ―

― 歴史 × 自然 × 身体活動が生む「地域共鳴」を読み解く ―
近年、山城を歩く人は確実に増えています。
一方で多くの地域では、「来訪はあるが滞在が短い」「周遊や関係性が広がりにくい」といった課題も指摘されてきました。
ここで問うべきなのは、経済効果の大小ではありません。
人は、どのような体験を通じて、その土地と関係を持ち続けるようになるのか。
本記事では、そのプロセスを**「地域共鳴」**という視点から整理します。
地域共鳴は「行動の重なり」から生まれる
地域との関係性は、一度の訪問で完成するものではありません。移動し、歩き、立ち止まり、眺め、考え、余韻を持ち帰る。こうした行動の重なりによって、徐々に形づくられていきます。
山城を起点とした体験には、
- 登山口までの移動
- 山道の歩行
- 遺構の観察
- 景観への没入
- 下山後の飲食や温泉
- 周辺史跡への関心
といった複数の接点が、自然に含まれています。
人はその過程で、無意識のうちに土地の空気や時間の流れに身を委ね、自分の体験を風景の中に重ねていきます。この積み重ねが、地域共鳴の土台になります。
「横方向の関心」が地域をつなぐ
地域共鳴を特徴づけるのは、同じ場所への再訪ではなく、関心の横方向への広がりです。
ある山城を訪れた人が、次は別の山城へ、別の谷へ、別の地域へと足を伸ばす。
そこには、
「次は何が見えるのか」
「この土地と、あの土地はどうつながっているのか」
という純粋な問いがあります。
この横方向の移動によって、人は地域を点ではなく線として捉え始めます。結果として、日本各地に点在する歴史や文化が、
体験として結び直されていきます。
日帰り体験でも起きる「関係性の蓄積」
山城を含む多くの体験は日帰りです。
しかし、日帰りであることは、関係が浅いことを意味しません。
歩行、地形の理解、遺構の読み取り、歴史への関心、地域文化への気づき。
これらが重なり合うことで、
「次は関連史跡へ行ってみよう」
「背景を調べてみたい」
「別の城も見てみたい」
といった行動が、時間を越えて連鎖していきます。
この継続する関心が、
地域との関係性を一過性のものから、
蓄積型のものへと変えていきます。
地域共鳴は「静かに育つ」
地域共鳴は、派手な演出や大規模な開発からは生まれません。
人が分散し、自然への負荷が小さく、地域の側も無理なく関われる環境でこそ育ちます。
山城を起点とした体験は、地域を消費するのではなく、地域と並走する関係を生み出します。
これは短期的な成果を求める観光ではなく、長い時間をかけて信頼と理解を重ねていくプロセスです。
まとめ|地域共鳴とは何か
地域共鳴とは、土地を消費するのではなく、行動を重ねる中で、人と地域の関係が徐々に深まっていく状態を指します。
山城を起点とした体験では、歩行・観察・理解・関心の連鎖が自然に生まれ、その積み重ねが地域との継続的な関係性を形づくります。
重要なのは、即時的な効果ではなく、静かに蓄積されていく関与の質です。






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