山城ACTレベル:初級 ★☆☆
山城Wレベル:W1 ★☆☆

この山城の魅力|3つのポイント
① 体験価値(ウェルネス)
短時間で本丸まで登れるなだらかな丘城で、整えられた段郭をゆっくり歩きながら「中世の館跡を散策する感覚」を味わえます。
② 遺構の固有性
連続する段郭や丁寧に掘られた空堀、復元冠木門、本丸周辺の柱穴列などがまとまって残り、「典型的な中世丘城のかたち」を一望しやすい遺構です。
③ 景観・地形の固有性
安山岩・玄武岩質の安定した丘陵上に築かれた城で、周囲の低地との比高がほどよく、日常の延長で「台地の縁から平野を見下ろす視点」を体験できます。
現地レポート|ルートと見どころ

丘の上にあり、古典的なスタイルです。しかし、古墳時代から使われており、首長の館も存在したとか。もともとそういう場所なんでしょう。
この宇土古城の城主は、もともとは宇土氏だったそうですが、1504年頃に人吉の相良氏に攻められた八代の「名和氏」が入城し、その後80年治めたのですが、1588年に小西行長が治めたとのこと。
謎の空堀の仕切り

早速、謎を見せてくれます。この仕切りはなんでしょうか。まさか、障子掘り。。。ではないでしょうし。


間に岩がおかれていたり。仕切られていたり。。。このような形状だったのか、意図的に残したのか。不明。
切岸と段築曲輪

本丸門の坂


冠木門が復元されている
本丸内


典型的な門の作りというか古風です。
本丸の空堀


周辺も丁寧に空堀に囲まれていますが、防御度は低いように思えます。


段築曲輪が綺麗に残っています。和水の田中城のような感じです



時期をかえて、撮ってみました。柱跡から建物の規模が分かります
遺棄された謎の宝篋印塔 五輪塔

あんまり見ない。


さて、一番興味深かったのは、この宝篋印塔 五輪塔群です。なんでも、説明書きには、「城割の際に遺棄された」と書かれていました。

なぜ、そんなことが行われたのだろう??
宝篋印塔や五輪塔は、もともとお墓というより「供養」や「功徳を積む」ために建てられる塔です。中世の宗教観では、塔を多く建てるほど供養の功徳も積まれると考えられていたとされ、そのため多数の塔が造立された地域もあります。
1589年に小西行長が近世宇土城 を築いた頃、天草地域は日本でも有数のキリシタン人口を抱えていた地域でした。
当時、天草は 人口約3万人 とされ、そのうち 約2万3千人がキリスト教徒(いわゆる切支丹)だったという報告が残されており、60名あまりの神父 と、30近い教会・集会所が各地にあったと伝わります(※ただし数値は宣教師らの記録に依る推定値)。
小西行長は熱心なキリシタン大名であり、宇土古城の城割と近世宇土城の築城には、軍事刷新だけでなく宗教的・社会構造の再編が絡んだ可能性があります。旧来の仏教遺構が整理され、キリスト教勢力に適した拠点として再構築されたという仮説も十分に考えられます。
このように城郭整備と宗教的空間の再編を同時に進める手法は、安土城にも見られる特殊な考え方です。全国的にも例が少なく、宇土のケースはその稀なパターンに重なる可能性があります。
この城の概要
宇土古城は熊本県宇土市の丘陵上に築かれた中世の城で、南北朝〜戦国期には宇土氏・名和氏ら在地領主の拠点となりました。段郭主体の構造が特徴で、本丸周辺には空堀や門跡が残ります。古墳時代の首長居館跡とみられる遺構もあり、古代から中世にかけて政治的中心地が重なった場所とされています。
出典:宇土市教育委員会説明板/調査報告資料
宇土市にある二つの「宇土城」
小西行長が作った「近世宇土城」
宇土氏や名和氏の「宇土古城」
と分けています。実際には、宇土城は宇土新城を指します。
山城ACTレベルと山城Wレベル
山城ACTレベル
比高の小さい丘城で、駐車場から主郭までは片道10〜15分ほどです。写真を撮りながらゆっくり歩いても、城域全体を一周しておおむね1時間前後。急斜面や長い登りが少なく、山城初心者でも体力的負担は小さめです。
山城Wレベル
段郭と空堀、復元冠木門、本丸の柱跡など、中世城の要素がコンパクトに並び、落ち着いたペースで「城の全体像」をイメージしながら歩けます。なだらかな地形のため呼吸が乱れにくく、会話や想像を楽しみながら巡りやすいことから、WレベルはW1(★☆☆)としました。
主なルート
・駐車場 → 遊歩道 → 段郭・空堀群 → 本丸(復元冠木門・柱跡)を周回
累積標高差と所要時間
累積標高差:駐車場から本丸までで体感50〜60m前後 / 所要時間:城域全体の周回でおおむね40〜60分
地形・地質のポイント
宇土古城は、安定した安山岩・玄武岩質の火山岩を基盤とする独立丘陵上に築かれており、浸食されにくい台地縁に段郭と空堀を配することで、平野を見下ろしつつ防御線を構築しやすい立地になっています。

アクセス・駐車場
所在地:熊本県宇土市
アクセス:JR宇土駅から車で約10分。熊本市中心部からは約40〜50分。
駐車場:城山公園周辺に無料駐車場あり。
登城口:駐車場から遊歩道が伸びており、案内板に従って段郭・本丸へ向かう。
周辺観光・温泉(地域共鳴)
歴史・景観スポット:御輿来海岸(おこしきかいがん)

宇土半島北岸に広がる御輿来海岸は、干潮時に現れる美しい砂紋と有明海に沈む夕日で知られる景勝地です。
「日本の渚百選」「日本の夕陽百選」にも選ばれており、潮の満ち引きと光がつくるグラデーションは、城跡散策とはまた違う「時間のうつろい」を感じさせてくれます。

海風に当たりながら遠くを眺める時間を組み合わせると、心身のON・OFFがきれいに切り替わっていきます。

感動しますよ
日帰り温泉:宇土市健康福祉館 あじさいの湯
宇土市内にある「あじさいの湯」は、地元の方にも親しまれている日帰り入浴施設です。内湯・露天風呂・サウナなどが揃い、落ち着いた雰囲気の中でゆっくり温まることができます。
泉質はアルカリ性単純温泉とされ、肌あたりが比較的やわらかく、登城後の疲れをゆるめながら過ごすのに向いた湯です。宇土古城と組み合わせれば、「歴史散策+温泉」で一日の流れを自然に区切りやすくなります。
まとめ
宇土古城は短い行程で本丸まで登れる穏やかな丘城で、段郭や空堀、復元門、本丸の柱跡など中世城の要素を無理なく体験できます。遊歩道が整備されており急斜面も少ないため、山城初心者や中高年の方にも歩きやすいコースです。
登城後は、御輿来海岸の景観や近隣の「あじさいの湯」と組み合わせれば、歴史と海と温泉が静かに響き合う一日になります。
免責
本記事の内容は、管理人による現地訪問・公開資料をもとにまとめたものであり、歴史解釈や地質・温泉効果などを断定するものではありません。訪問時は最新情報をご確認のうえ、体調や安全に十分ご配慮ください。









コメント