山城ACTレベル:上級 ★★★ 山城Wレベル:W3 ★★★
この山城の魅力|3つのポイント
① 体験価値(ウェルネス)
・麓から巡礼道を登る時間そのものが静かに深まり、“歩くリズム”で心が整っていく。
・観音正寺から山腹の屋敷群に進むほど、巨石と石垣が重なる空間に包まれ、場の切り替わりが続く。
② 遺構の固有性
・伝本丸・伝平井丸・伝池田丸が谷を挟んで並び、屋敷城的な空間が山腹に広く展開する。
・巨石虎口・埋み門・居住的な曲輪群が連続し、日本100名城にふさわしい大規模さを感じる。
③ 景観・地形の固有性
・標高約432mの観音寺山全体に郭が散らばり、“全山要塞”の起伏を歩きながら味わえる。
・急斜面の段々曲輪と巨石群、そして眺望が重なり、地形と城郭が一体となった景観が立ち上がる。
現地レポート|ルートと見どころ
巡礼道ルートをひたすら登る

さ、登るぞ~!

日吉神社
石寺古墳群
御屋形跡
を抜けて進みます
城域に入る
最初は「景清道」をまたぎ、日吉神社、石寺古墳群、御屋形跡といったポイントを順に抜けていきます。まだこのあたりは、歴史散歩の延長のような感覚です。
しかし、城域に近づくにつれて様子が変わります。


ここから地獄が始まる

登る

ドンドン登る ひたすら登る

まだまだ登る

ちょっと休憩!

そして、追い抜かす
観音正寺に到着

ようやく終わりが見えてきたところで、まずは観音正寺に到着します。 「よく登り切ったなあ」と自分をねぎらいたくなる階段の連続で、この時点で体力の半分は使い果たした感覚。
膝はしっかり笑っています。観音寺城はこの先に!

うわ~なんかすごいなあ。来迎図かなんかを岩で現わしているのでしょうか
一気に本丸を攻めます


伝本丸へ至る 大石段

苔むした石段の雰囲気が非常に良く、「これぞ山城×寺院の世界」という空気をつくり出しています。

この階段は、伝本丸へ続く一本道
折れや升形など一切ない。こんなにアクセスが良くて防備は大丈夫なのかとも思う。かつては、「大手道」とか言われていましたが、
最新の研究では「大手道ではない」とされつつあるようです。何か、お寺の参道のような気もします。
どのような目的でこれが作られただろうか。安土城や日野江城の階段遺構とは、意味合いが少し違う気もします
階段を上がると 伝本丸へ

伝本丸へ上がったものの、ここは山頂ではない。ちょっと低い場所に伝本丸があります。謎ですね


巨石による違い虎口。なかなかの大きさ。一乗谷の入口を彷彿とさせます。素晴らしいです。
有名な伝平井丸


埋み門があります

中にも虎口があります


完全な住居スペースに思えます。かなり広い

伝平井丸の虎口。威厳の圧が凄いし。強いて言えば、

ジャングル密林の巨大遺跡!
家臣でこの規模は必要!?平井氏とは相当の権力者だったのでしょう。

かなりの巨石を打ち込みハギで造っている。ここまで巨大な岩石を使うケースは珍しい。圧巻です。

ゴールの伝池田丸へ


地下室??伝平井丸にもありました


結構な歩数と情報量で疲れ果て、30分ぐらいボーとしていました
さ、戻るか。
伝落合丸を通って、再び伝池田丸へ


伝平井丸に戻って来ました。これまで歩いてきましたが、この城は、どれが「大手道」になるのか不明です。伝池田丸~伝平井丸への道は、かなり立派です。
感じたこととしては
家臣団との集団生活が凄い

城内には「伝〇〇邸」と呼ばれる屋敷地が北部を含めて無数に存在しており、時間と体力の関係で全ては回り切れないほど。
それでも、家臣団の屋敷が山中にこれだけ密集しているという事実から、
「縦よりも横の関係が強かったのかもしれない」
という印象が残りました。
アクセス・駐車場
【車】
・名神「八日市IC」「竜王IC」から約30〜40分。
・観音正寺の表参道・裏参道に山上駐車場あり。
・山上から観音正寺経由で主郭部へ。
※ルートが多いため事前確認が安心です。
この城の概要
観音寺城は、滋賀県近江八幡市の観音寺山に築かれた大規模山城で、
六角氏の中心となった中世屈指の城郭です。
標高約432mの山上から南側まで広く郭が分布し、
巨石の虎口・屋敷群・段々曲輪が続く構造が特徴で、
日本100名城(No.52)にも選ばれています。
山城ACTレベルと山城Wレベル
山城ACTレベル:上級 ★★★
山城Wレベル:W3 ★★★
山城ACTレベルの設定理由
標高差が約350〜400mと大きく、麓から長時間続く急坂と石段で体力負荷が高い山城です。
巡礼道〜観音正寺〜各曲輪へと歩き続ける行程は7〜8kmほどあり、距離も長めです。
中高年の方が登る場合は、休憩を挟まないと体力的に厳しくなる場面が多いため、「上級 ★★★」と判断しました。
山城Wレベルの設定理由
巨石群・石垣帯・屋敷跡が山上に密集し、空間の切り替わりが連続して没入感が非常に深い構造です。寺院遺構と城郭遺構が重なり、歴史層の厚みと視覚情報量が大きく、「山城世界の階層」を歩く体験になります。
景観・構造・密度がいずれも濃く、歩くほどに没入感が増していくため、W3 ★★★ としました。
今回の主なルート
・麓 → 巡礼道 → 観音正寺 → 伝本丸 → 伝平井丸 → 伝池田丸(往復 約7〜8km)
累積標高差と所要時間
・累積標高差:約350〜400m
・所要時間:約4時間(標準)
地形の特徴
急斜面に巨石・段々曲輪・石垣帯が重なり、立体的な山頂構造が続く山城です。
地形・地質のポイント

観音寺城の立地する観音寺山は、湖東流紋岩を主体とした非常に硬い岩盤からなる山で、安土山と並んで湖東カルデラの一部として知られています。
山上と山腹にはこの湖東流紋岩の巨石が露頭し、その石材を利用した石垣・虎口・段々曲輪が、急斜面に段状の居住空間を刻み込んでいます(流紋岩とは、マグマが地表付近で急冷してできた火山岩の一種で、硬く風化しにくい岩石です)。
「なぜここに城が築かれたか」という点では、湖東流紋岩の急峻な尾根と谷が天然の防御線となり、巨石を石垣・虎口に転用できる“要塞地形”であったことが、守護の本城として選ばれた大きな理由といえます。

安土城と同じ「流紋岩(ピンク部分)」。通ってきた「観音正寺」裏に祭られている。

これらの仏様も流紋岩ということになります。
周辺観光・温泉(地域再生)
温泉|長命寺温泉 天葉の湯(車で約20〜25分)
観音寺城から湖岸側へ下り、近江八幡市・長命寺山の麓にある日帰り温泉「長命寺温泉 天葉の湯」は、城歩き後に立ち寄りやすい距離感の落ち着いた施設です。
- 泉質:単純弱放射能温泉(天然温泉)
- 一般的な適応症(温泉法でよく挙げられるもの):痛風・動脈硬化・高血圧・慢性皮膚病などに対して、温泉地で利用されることがあります。
露天風呂や休憩スペースもあり、登城後に汗を流しつつ、湖東の山並みと琵琶湖エリアの余韻に浸ることができます。
観光地としての喧騒とは少し離れた、中高年世代にも落ち着く静かな湯です。
グルメ|温泉併設の食事処・湖畔の定食
長命寺温泉 天葉の湯には、和食中心の食事処が併設されており、湯上がりに軽めの定食やうどん・そばといったメニューを楽しめます。
城登山 → 温泉 → 定食という流れにすると、カロリーも摂りすぎず、身体にやさしい一日コースになりやすい動線です。
名所|西国三十三所 第31番札所・長命寺
温泉のすぐ近くにある長命寺は、西国三十三所第31番札所として知られる古刹で、808段の石段を上った先に、琵琶湖を一望できる堂宇が並びます。
観音正寺(第32番)とあわせて巡ることで、
「観音寺城+観音正寺+長命寺+温泉」という、歴史と景観とウェルネスがひと続きになる周遊コースが組めます。
まとめ
観音寺城は、麓から登った場合
・麓からの巡礼道と急な石段で「歩く冥想」と達成感を味わえる点、
・巨石を用いた虎口や屋敷群がつくる“家臣団との集団生活空間”を身体で感じられる点、
・湖東流紋岩の急峻な地形と琵琶湖の眺望が重なるダイナミックな景観、
という意味で、初心者よりは「山城に少し慣れてきた中高年ハイカー」に向く山城ウェルネス・フィールドだといえます。
最も印象的なのは、やはり伝平井丸・伝池田丸周辺の巨石石垣と屋敷群。
「山の上にこれほどの街があったのか」と感じる瞬間が、この城ならではのハイライトです。
免責
本記事は個人的な体験に基づくもので、歴史的解釈を断定するものではありません。
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