東京

八王子城②(東京都八王子市)|油断、大敵

山城ACTレベル:中級 ★★☆
山城Wレベル:W3 ★★★

※現在「殿の道」は石垣保護のためルート自粛制限中。

山城ウェルネス

山城ACTレベル:中級 ★★☆
御主殿周辺までは整備道が中心で歩きやすい一方、本丸〜詰の城エリアは急斜面・細い尾根・岩の露出が増え、足元の注意が必要です。全体として「史跡散策+山道」の混在型のため、中級(★★☆)としました。

山城Wレベル:W3 ★★★
御主殿の石垣庭園から本丸の狭い平場、詰の城裏の大堀切、山王台や八王子神社周辺まで、場面の切り替わりが多い構成です。歩く区間ごとに景色と手触りが変わり、城域全体の輪郭を追いやすいので、W3(★★★)と位置づけています。

主なルート
・管理棟 → 御主殿跡(石垣・庭園を見学)
・御主殿跡 → 金子丸・高丸 → 本丸
・本丸 → 詰の城 → 詰の城裏の大堀切 → 山王台 → 氏照の腰掛石 → 御主殿へ戻る周回ルート

累積標高差と所要時間
累積標高差:未計測 / 距離:未計測 / 所要時間:未計測(見学の量で変動します)

地形の特徴
尾根と谷がはっきりした山塊で、岩盤露出や急斜面が多いのが特徴です。これが曲輪・堀切・通路の“切り立ち感”として、そのまま城域の印象につながっています。

アクセス・駐車場

・駐車場:管理棟そばに無料駐車場あり(目安 9:00〜17:00)。観光シーズンは満車気味。
・登城口:管理棟〜御主殿跡は散策路、本丸・詰の城方面は登山道のため、山歩き装備がおすすめです。

現地レポート|ルートと見どころ

八王子城跡の現地案内図パネル
現地案内図

前回の2011年訪問を振り返る

八王子城跡管理棟付近の様子

活動フィールドが南西日本なので、関東以北エリアはどうしても頻度が落ちます。これはこれで仕方がない。

ただ、たまに東京出張があるので、タイミングを合わせて今回は再訪しました。前回(2011年)は、入った直後から体調が崩れたりして、落ち着かない時間になった記憶があります。

そこで、今回は、例のあの場所には

八王子城跡の慰霊碑周辺の様子

近づかず、まずは山頂方面を優先して動くことにしました。

八王子城跡全体図の案内板
現地案内図

金子丸

金子丸付近の登城路と案内板
金子丸周辺の山道と石積み

道は整備されており、特に問題なくすぐに到着します。一つの重要拠点のようで金子家重という武将が守っていたようです。

山道沿いに残る石積みの遺構

歩行のリズムが整い、周囲の地形や案内板を落ち着いて見る余裕が出てくる頃合いです。

樹林帯の中に続く登城路

途中に石積みも散見され城域に入った実感が少しずつ強まってきました。

(中間分岐点)柵門台

ここが分岐点。しかし、

山城Q
山城Q

ちょっと気になる

登城からほどなくで柵門台に到達します。
ここは登城路が分かれる分岐点にあたり、進路を確認するため自然と足を止める場所です。

新道・旧道・搦め手が合流する位置にあり、地形的にも重要なポイントであることが分かります。ただし、現地に立ってみると、視界が急に開けたり、強く圧迫されるような印象は控えめです。

あくまで「通過点」としての性格が強く、次のエリアへ進むための節目として受け取るのが自然に感じられました。

高丸

高丸付近の分岐と案内板

この先は進まないように、という案内の出方です。

本丸周辺 地図

八王子城本丸周辺の拡大図

八王子神社

八王子神社の社殿正面

「八王子城」という名前は、この「八王子神社」から来たものでしょう。西日本の人間にはなじみが薄いので、簡単に確認しました。

八王子神社(はちおうじじんじゃ)は、スサノオ(牛頭天王)の八柱の御子神(八王子権現)を祀る神社である。八王子宮、八柱神社(やはしらじんじゃ)などとも言い、日本全国にある。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

へーーー。そういえば、似たようなネーミングで思いつくのは、

山形の長谷堂城ですね。こちらも、年季の入ったお堂があります。

山の上に、古くからの信仰に関わる場所や建物が置かれている例は各地で見かけます。城域を見るときも、そうした要素が「場所の使われ方」として残っていることがあります。

小宮曲輪

小宮曲輪と案内板の様子

それにしても、この城は各所に案内看板があり、動線がつかみやすい。整備と情報の出し方が丁寧だと感じます。

小宮曲輪周辺の石段と社
狛犬と鬼のような像が並ぶ社前

迫力があります。狛犬の表情も独特で、思わず足が止まります。

本丸跡

樹林に囲まれた本丸跡の平坦地
本丸跡に立つ説明板と石碑

本丸跡。でも

山城Q
山城Q

狭い!?

先ほどの八王子神社にしろ、この本丸跡にしろ、スペースが狭い。

これは来てみて感じたところです。対して、滝川城はかなり広く、「これこそ北条の城だ」という印象が残っていたので、八王子城の“狭さ”は意外でした。

城域こそ広大ですが、居住スペースがこの程度だと、常駐の規模には限界があったのでは、と考えたくなります。

(中間分岐点)井戸跡

石積みで囲われた井戸跡

山城には重要な「井戸」です。この場所が下が分岐地点となります。ここは、下の御主殿ルートからしばらく上がってきたところに位置します。

一路、詰の城へ

本丸奥へ続くやや荒れた登山道

本丸周辺から奥となると、急に道が悪くなります。岩の露出や苔、落ち葉があり、滑りやすい場面もあるので注意が必要です。

岩が露出した急斜面の山道

サクサク進みます。

馬冷し(こまびやし)地点

馬冷し周辺の窪地と案内板
馬冷しに残る堀切状地形

だんだん、普段の山城らしい雰囲気が出てきました。掘りきっていますね~。

やがて、詰の城へ

詰の城手前の急登部分
詰の城周辺に転がる多くの岩石

岩石がたくさん転がっています。最後の抵抗用、という見立てもしたくなりますが、やはりここも

山城Q
山城Q

狭い

というのが感想です。

本命 詰の城裏の大堀切

詰の城裏に刻まれた大堀切を見下ろす
山城Q
山城Q

これが見たかった。

だいたい、詰城の裏は深い谷か大堀切で区切られている印象があります。ここも、はっきり刻まれています。

大堀切底から見上げる斜面と樹木
阿吽のように立つ二本の大木と堀切

左右に大木が立っていて、印象に残ります。ここまで人が来ないのか、苔むした感じも良い。岩盤が見える堀切で、工事は相当大変だったはずです。

帰路に就くが、、、山城の本性に出くわす

詰の城裏の大堀切を見学したので帰ろうとしたものの、来た道をそのまま戻るのも味気ない。そこで別ルートで下山することを考えました。目に入ったのがこのルート。

詰の城裏から御主殿へ抜ける別ルートの案内図

たしか前回は、御主殿上の石垣群を下から登り、途中の「氏照腰掛石」あたりで満足して引き返しました。ショートカットできそうだし、近そうだから良いか、と進むことに。

という考えが甘かった。ここは山城で、地形そのものが防御になります。

狭く急な獣道のような斜面

この道、もはや獣道に近い。ルートとしては人を選ぶと思います。落ち葉が滑るので、へばりつくように歩く。引き返すのも面倒なので進みます。

岩が張り出した通路とその下に続く細い道

そして、極めつけは、この場所!

山城Q
山城Q

無理でしょ!!

岩石が通路側に出っ張っている。

そして、少し下ったところに岩石通路。しかも斜面で落ち葉が堆積。飛び乗ると着地がズレて滑るリスクが高い。掴まる場所も少ない。

本当に困った。

仕方がないので落ち葉を払いのけ、足場を作り、頼りない枝や根を使いながらゆっくり進むことにしました。

山王台

山王台に建つ慰霊碑と周囲の森

こんなところに碑があります。八王子城落城に際しての慰霊碑とのこと。ここまで運ぶのは大変だったはずで、静かに一礼。といいますか、私も先ほどの道で危なかったですが。

氏照の腰掛石へ

氏照の腰掛石周辺の石垣
氏照の腰掛石そのものの様子

この場所って、なんか落ち着く。狭い空間の背後に頑固な石垣。そして、この腰掛石。雰囲気が良くて、今回もちょっと座っていました。

この城の概要

八王子城は、後北条氏の北条氏照が深沢山の尾根上に築いた山城で、小田原城を支える西方防衛拠点でした。

天正18年(1590)、小田原征伐により豊臣方の軍勢に攻められて落城し、その後は廃城。現在は国指定史跡で、日本100名城として整備・公開されています。

出典・参照:八王子市公式サイト、日本城郭協会ほか

地形・地質のポイント

八王子城周辺の地質図(シームレス地質図)
引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

近場の滝山城と見比べると、地形の印象の違いが出ます。滝山城付近は砂地であっても礫岩程度。
一方で八王子城付近は、堆積物由来の岩盤が目立ちます。

山城Q
山城Q

砂岩が豊富

な様子。滝山城の防御度に憂いた北条氏照が、近場で適度な岩石がある山を探したらここになった、という見立ても納得感があります。

高尾山系と同様、海底で堆積した砂や泥が固まった地層が基盤となり、露出した岩盤が谷と尾根の形を強めています。結果として、城域の“切り立ち”がはっきり見える地形になっています。

この山城の魅力|3つのポイント

① 体験価値(ウェルネス)
整備道から要害部へ進むにつれ、歩行と足元への意識が自然に切り替わります。御主殿で一度ゆるみ、詰の城で再び引き締まる流れが続くのが特徴です。

② 遺構の固有性
御主殿の石垣・虎口から大堀切、金子丸・馬冷しまで、縦深の防御要素がまとまって見られます。野面積みの石垣が「北条の山城石垣」を印象づけます。

③ 景観・地形の固有性
尾根上の急斜面と岩盤露出が続き、防衛線の輪郭が読み取りやすい地形です。本丸や山王台周辺からは高尾山方面や関東平野側の眺望が開けます。

周辺観光・温泉(地域共鳴)

温泉|京王高尾山温泉 / 極楽湯(高尾山口駅前)

高尾山口駅前にある日帰り温泉施設で、登山や城歩きのあとに立ち寄りやすいロケーションです。休憩スペースも多く、移動の締めとして使いやすい施設だと感じました。

【グルメ】高尾山 高橋家(高尾山口駅前・老舗そば処)
高尾山エリアでは、ケーブルカー清滝駅前の老舗そば処「高橋家」も選択肢になります。歩いた後に、温かいものを食べて一区切りつけやすい場所です。

【歴史スポット】滝山城跡(同じく八王子市内の山城)
同じ北条氏照が拠点とした滝山城跡は、広大な曲輪と土の城としての防御線がよく残る山城です。八王子城と見比べると、築城の考え方や地形の使い方の違いが見えやすくなります。

免責

本記事は、現地での観察メモをもとに整理し、筆者なりの解釈を加えた記録です。史実の正確性を保証するものではありません。また、整備状況・所要時間・交通手段・施設情報等は変更される可能性がありますので、訪問の際は必ず最新情報をご確認ください。

気づき

2011年の前回と今回の二度に渡って訪れ、見学しました。

確かに城域は広大で、岩石が多い山塊です。そこを石垣や堀切で固めており、作り込みの努力が見えます。一方で、岩の粒や積み方の印象から、北条はやはり「土の城」に強みがある、と感じる場面もありました。

西日本の山城と比較しながら登ると、各大名の強み・弱みが見えてくると思います。

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