
この山城の魅力|3つのポイント
① 体験価値(ウェルネス)
木曽川を見下ろす静かな登城路は、歩くほどに気持ちがほぐれ、自然とリセットされるような時間が流れます。短時間でも「山に来た」と感じられる、ほどよい登りです。
② 遺構の固有性
自然岩と石垣が融合した「大矢倉」や、岩盤上に組まれた独特の天守台が、この城だけの存在感を放ちます。巨岩そのものが防御線になっていることを、目で実感できる山城です。
③ 景観・地形(地域共鳴)
山頂から望む中津川の街並みや恵那山方面の眺望は、川と段丘と町並みが一望できる景観です。木曽川の流れと人の暮らしが、静かに重なって見えてきます。
城域に入る


自然岩と石垣の重厚コラボレーション 大矢倉
ほぼ、これを観たかったといっても過言ではありません。この岩の造形物を写真で見たとき、ショックを受けました。

ここは日本??
という感じです。自然岩と石垣が見事に調和した構造で、特に注目されています。岩の形状や積み方が多様で、布積みや打ち込みハギなど、職人の技が光りますね。



別の角度から。一枚上とは積み方が違いますね。布積みっぽい雰囲気です。


いろんな積み方があります。

天守の方を見ると



苦労して積んだんでしょうね。わりと小さい石で丁寧に積んでいます。


下は野面積みですが、上は打ち込みハギのように見えます。その間に、大きな岩石を散りばめる構造が印象的です。
異形天守展望台の木組み



この日、天守の木組みを詳しく撮りたかったのですが、他に「バードウォッチング」グループがおられまして、あんまり撮影が出来ませんでした。
天守からの眺望

それぐらい高所です。
大矢倉を上方から撮影

大矢倉を上方から撮影。これが撮りたかったわけです。
この「石垣の塊」は、もはや日本のモノとは思えません。ここを抜かれると天守まではすぐですから。頑固に造る必要があったのだと思います。
この城の要は、この「大矢倉」に掛かっているといっても良いのかもしれません。
この城の概要
戦国期に遠山氏が築いた山城で、木曽川の断崖上に立地する天然の要害でした。巨岩をそのまま石垣として取り込む構造や、岩盤上に組まれた天守台など、自然地形と建造技術が一体となった独特の姿が特徴です。
アクセス・駐車場
- 車:中津川ICから国道19号 → 国道257号経由で約10分
- 駐車場:苗木城跡第一駐車場(ほか複数あり)
- 公式地図:中津川市観光サイトの案内図を参照
山城巡りの記念すべき城が、ここ「苗木城」だったのでした。
山城ACTレベル(★1〜★3)
ACTレベル:★1(初級)
石段と岩場が続く場面があるものの、登城路の整備が良く、一般観光客でも登りやすい難易度です。時間や体力に不安がある方でも、ペース配分を意識すればチャレンジしやすい山城です。
- 標高:432m
- 想定時間:約1時間
- 歩行距離:1.5〜2km
- 累積標高差:約170m
- 地形:尾根上の巨岩帯
- 注意:石段の傾斜、展望台付近の高度感、落葉時期の滑り
Wレベル:W2(中)
巨岩帯と段丘地形、木曽川の眺望が組み合わさり、「地形を読むポイント」がいくつか現れます。導線は比較的シンプルですが、岩と石垣と景観の重なりを味わえる、ほどよい“中深度”の山城ウェルネスです。
地形・地質のポイント|「苗木‐上松花崗岩」帯は宝の山!?

地質図を見てみると、木曽川に沿って形成された河岸段丘の上に城域が築かれています。木曽川は「苗木‐上松花崗岩」を貫いて流れており、南部(黄色・薄緑)は堆積岩層です。
城がある場所は花崗岩層であり、あのような花崗岩巨石ができた背景には、この地質帯の存在があります。まさに「良い場所に城がある」と感じさせられます。
しかし、もう少し全体を見てみる必要があります。実は、この場所は――

ちょっとわかりづらいですが、恵那山付近から北西端にあたる白川村地域にいたる広大な地域に分布する巨大な火山岩帯の一角に位置しています。

濃飛流紋岩(のうひりゅうもんがん)
「濃飛流紋岩」とは?
1. 火山岩の一種
- 主成分は流紋岩(リュウモンガン、英語:Rhyolite)で、火山噴出物の中でも高シリカ質の酸性火山岩に分類される。
- 粘性が高く、火山活動によって粘度の高いマグマが地表に流れたり、爆発的に噴出して堆積したもの。
2. 地質的背景
- 主に白色〜淡灰色で、細粒〜微粒なガラス質やクリスタルが混ざっている。
- 岐阜県飛騨地方や濃尾平野周辺に広く分布し、古第三紀〜新第三紀の火山活動に由来するとされる。
3. 岩石の特徴
- 多孔質や気泡構造が見られることもあり、火山噴出物の特徴を示す。
- 硬くて風化しにくく、建築材や石垣材料としても利用される。
濃飛流紋岩は、流紋岩と呼ばれますが、実際は溶結凝灰岩であり、火砕流堆積の産物となります。
わずかに分布する「苗木ー上松花崗岩」は、巨大な一枚岩状の花崗岩体で、地質学的には「花崗岩帯」として分類されています。その縁にあたる場所に苗木城が築かれている、というわけです。

この地域でも太古に超大爆発があり、
コールドロン(陥没盆地)を形成した!?
コールドロン(cauldron)とは、地殻内でマグマの移動や噴出に伴って形成される陥没構造(カルデラ)や複雑な火山性変形構造を指す専門用語です。
ただし、通常の「カルデラ(caldera)」と区別して使われる場合もあり、より構造的に複雑で内部にマグマの貫入やドーム形成を伴うものを指します。
周辺観光・温泉
温泉
かすみ荘(ラジウム温泉)
- 距離:車で約6分
- 泉質:ラジウム泉(pH 約7.8)
- 一般的な適応症の一例:神経痛・筋肉痛・関節こわばり・冷え性 など(温泉法に基づく一般説明より)
- 実感:岩場を登った後の脚・腰の張りがほどけ、体が内側から温まりやすい湯あたりです。
- 歴史:昭和39年創業。地域住民に長く親しまれてきた静かな日帰り湯です。
※適応症は一般的な泉質説明に基づくものであり、効果を保証するものではありません。入浴の可否や体調管理についてはご自身の判断・主治医の指示を優先してください。
グルメ
中津川名物「栗きんとん」は、登城後の軽い甘味補給としてぴったりです。和菓子店で地元の味を楽しめ、散策の締めにも向いています。
名所
馬籠宿(中山道の宿場町)は、石畳の道と歴史的な建物が残る風情あるスポット。苗木城と組み合わせて巡れば、歴史と自然の二層を楽しめる旅になります。
まとめ
この城は、登城路がしっかり整備され、初心者や中高年でも安心して歩ける山城です。巨岩と石垣が織りなす構造と山頂の眺望が印象深く、短時間のハイクでも「歩いた満足感」が得られます。
馬籠宿など周辺の観光スポットやラジウム温泉と組み合わせれば、山城ウェルネスと地域の魅力を一度に味わえる小さな旅になります。
主な出典
出典:『日本城郭大系』、岐阜県・中津川市の文化財資料、産総研地質調査総合センター「日本シームレス地質図」、国土地理院地形図 ほか
免責
本記事は山城Q個人の体験・感想・調査に基づくものであり、歴史的事実や効果を断定するものではありません。訪問・登城の際は最新の現地情報をご確認のうえ、安全に十分ご配慮ください。







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