熊本

田中城(熊本県和水町)|山城ウェルネス × 山城ACT

ACTレベル:★1(初級)

この山城の魅力|3つのポイント

  1. 体験価値(ウェルネス)
     芝生に覆われた広い郭を歩きながら、ゆるやかな起伏と開放的な眺めの中で、心と体がゆっくりほぐれていく時間を味わえます。
  2. 遺構の固有性
     弾正屋敷周辺の連続する平坦地や、主郭周辺を取り巻く大規模な畝状竪堀・土橋など、丘全体を丁寧に「使い切った」縄張りが見事です。
  3. 景観・地形の固有性
     阿蘇4火砕流起源のシラス台地上に築かれた平山城で、芝刈り直後は丘全体のラインが一望でき、畝状竪堀のリズムや防御ラインが一目でつかめます。

ACTレベル(★1:初級)

標高・距離・時間:標高約104m、比高は約50mほどの平山城で、城域一周しても徒歩1時間前後の周回コースです。

地形要素:台地上に広い郭が連なり、弾正屋敷・主郭・二の丸・出丸・捨曲輪など、多段の平坦地をたどる構成です。

累積標高差:急斜面区間は短く、累積標高差も大きくないため、山歩き初心者でも負担が少ないコースです。

総合評価理由:整備された遊歩道と広い芝生郭が中心で、危険箇所が少なく、ゆっくり歩きながら縄張り全体を俯瞰できるため「★1(初級)」と評価します。

中高年の方への注意点:シラス台地特有の崩れやすい斜面が一部にあるため、雨上がりは足元への注意が必要です。草刈り直後は非常に歩きやすい一方、夏場は日差しを遮るものが少ないので、帽子・水分補給を意識したいところです。

期待できるウェルネス効果(一般的な体験イメージ)

  • セロトニン:芝生の郭をゆったり歩く一定リズムが、心の落ち着きや一日のリセット感をもたらすことがあります。
  • ドーパミン:弾正屋敷前の平坦地や出丸、畝状竪堀などを一つずつ発見していく達成感が、前向きな気分につながりやすいです。
  • エンドルフィン:緩やかなアップダウンと広がる農村景観の組み合わせが、心身のリラックス感につながる場合があります。
  • ノルアドレナリン:キルゾーンとなる細長い郭やシラス斜面を意識して歩くことで、足元や周囲への集中が高まり、思考の切り替えを促すことがあります。

※これらはあくまで一般的な体験イメージであり、医療効果を示すものではありません。体感には個人差があります。

この城の概要

田中城は、熊本県和水町に築かれた中世の平山城で、和仁氏の本拠として肥後北部を支配した拠点です。

天正15年(1587)の肥後国衆一揆では、豊臣秀吉の命を受けた加藤清正・小西行長らの大軍を前にしても容易に屈せず、最後まで抵抗した城として知られています。

丘陵上の広い台地を利用し、主郭・二ノ丸・出丸・弾正屋敷などを配し、周囲を土塁・堀・畝状竪堀で固めた縄張は、まさに「国衆の意地を示した堅城」。

現在は国指定史跡として整備され、肥後の戦国史を語る貴重な山城遺構を今に伝えています。

地形・地質のポイント

シラス台地

特徴は、このシラス台地。これがベースにあるため、どうにでも加工が出来る様子。しかし、そのためか石垣は組めなかったのでしょう

引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

地質を確認しても、ちょうどこの辺りは、火砕流帯でシラス台地。この土壌は、

山城Q
山城Q

阿蘇NO.4火砕流帯

引用:星住英夫・宝田晋治・宮縁育夫・宮城磯治・山崎 雅・金田泰明・下司信夫 (2023) 阿蘇カルデラ阿蘇 4 火砕流堆積物分布図.大規模火砕流分布図, no. 3. 産総研地質調査総合センターを山城Qが追記

のこの辺りの上限となります。あちこちに出てくる阿蘇NO.4火砕流帯。島原の原城~熊本城~竹田の岡城~大分の臼杵城などの築城に影響を与えています。この土壌があったからこそ、この城が出来たわけです。

縄張り図 現地看板

個人的に、この城がお気に入りです。通常、丘城にしろ山城にしろ、藪や雑木林に囲まれ視認性は良くありません。しかし、ここはメンテナンス具合は、秀逸で柵を造ればすぐに実戦に使えるんじゃないかと思うぐらいです。

今回は、「全山芝刈り」直後ということで、これ以上に遺構が確認できる場所は他に知りません。

現地レポート|ルートと見どころ

保存状態が良い連続平坦地

今回は、反時計回りに進み、弾正屋敷らへんから主郭を目指します。

圧巻ですね。この平坦地はなかなか他では見られません

弾正屋敷前の階段を進みます

綺麗に見渡せます。眺めが良い。

山城Q
山城Q

死地(キルゾーン)に立ってますよ

ここが一つの関門でしょうね。シラス台地なので、崩れつつありますが。むかし、富山の増山城で似たような独立単郭をみたことがあります。面白い。

主郭部

広い!

主郭はきれいな芝生敷き

出丸

二の丸郭から捨曲輪を見るとここも綺麗に刈られており、しかも、土橋と空堀が確認できます。
それにしても、ただの切岸ではなく、丁寧に小さな平坦地が設けられております。

主郭周辺をぐるりと取り囲む大規模畝状竪堀

特筆すべきは、二の丸郭を半分囲むように、
巨大な畝状竪堀壁?
巨大な仕切り?
が施されており、横には進むことはできません。実際に登山靴で挑戦してみましたが、なかなか厳しいものがありました。

何度みても、「素晴らしい」としか言葉が出ません。シラス台地でも鹿児島のシラスよりも粘性が高いようで、これまで形を維持できたのだと思います。

東側 段郭

畑ではありません(一部は畑でしたが)

この竹藪は、意図的に植えられているのかは不明ですが、整備がされています。木を切って、柵を立てれば、すぐに実戦に使えるレベルの遺構具合です

田中城の摩崖仏

火砕流堆積物は凝灰岩になるので、こちらにも、このような石仏が残されています。大分県っぽい。

アクセス・駐車場

  • 所在地:熊本県玉名郡和水町江栗田中城跡一帯付近
  • マイカー:九州自動車道「菊水IC」から車で約20分前後。和水町中心部から案内板に従って進むと、城跡周辺に2か所の駐車場があります。
  • 公共交通:JR鹿児島本線「玉名駅」・「長洲駅」から和水町方面行きのバスを利用し、最寄りバス停から徒歩圏内(本数が少ないため、事前の時刻表確認が必要です)。

トイレ:城跡周辺の公園施設やミニミュージアム付近にトイレが整備されている場合がありますが、開館時間や利用可否は事前確認がおすすめです。

周辺観光・温泉(地域共鳴)

周辺観光

  • 田中城ミニミュージアム(仮称表示)
     和仁氏や田中城の歴史、和水町の地域文化を紹介する小規模ミュージアムで、城跡見学とあわせて立ち寄ると、城の背景が立体的にイメージしやすくなります。
  • 江田船山古墳・肥後古代の森(和水江田川カヌー公園一帯)
     装飾古墳や古代の出土品を通じて、古代肥後の歴史に触れられるエリアです。中世の田中城とあわせて歩くと、同じ地域の「時間の層」を感じやすくなります。

山城帰りに立ち寄りたい温泉

  • 菊水ロマン館 周辺の温泉施設(例:菊水ロマン館温泉施設)
     菊水IC近くの道の駅エリアには、日帰り入浴が可能な温泉施設があり、田中城から車でアクセスしやすい立地です。
  • 泉質:単純温泉またはアルカリ性単純温泉(いわゆる「やさしい湯」で、成分総量が比較的少なく肌あたりが柔らかいのが特徴とされます)

まとめ

田中城は、阿蘇4火砕流起源のシラス台地を巧みに利用し、丘全体を余すところなく「防御と生活の場」に変えた平山城です。芝刈り直後のタイミングに訪れると、弾正屋敷や主郭・出丸・捨曲輪、そして主郭周辺の大規模畝状竪堀まで、教科書の図のように縄張りが浮かび上がって見えます。

比高は大きくなく、遊歩道も整備されているため、山城ビギナーや中高年の方でもチャレンジしやすい一方で、防御構造の密度は非常に高く、天正十五年の「肥後国衆一揆」では豊臣秀吉方の大軍を前にしても容易に屈しなかったというエピソードを持つ城でもあります。

「歩きやすいのに読み解きがいがある」だけでなく、「静かに粘り強さを物語る」稀有な城といえます。周辺の古墳やミュージアム、菊水周辺の温泉と組み合わせれば、一日を通して「歴史 × ウェルネス × 地域共鳴」をゆったり味わえるコースになります。

免責

本記事は、公開されている資料・現地看板・一般的な地形・地質情報および筆者の現地体験に基づいてまとめたものであり、歴史・地質・効果を断定するものではありません。
登城・観光の際は、必ず最新の交通情報・気象情報・現地の案内に従って行動してください。

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