熊本

田中城(熊本県和水町)|シラス台地を段築と竪堀で覆い尽くした城

山城ACTレベル:初級 ★☆☆
山城Wレベル:W3 ★★★

山城ウェルネス

山城ACTレベル:初級★☆☆
城域は整備され、芝生面と遊歩道を中心に歩けます。急斜面や危険箇所は限定的で、比高も大きくありません。城域一周も徒歩1時間前後で収まり、体力・技術の負荷が低い構成です。

山城Wレベル:W3★★★
丘全体を使い切った縄張が、視認性の高い状態で把握できます。連続する平坦地(弾正屋敷周辺)→主郭→出丸・捨曲輪→主郭周辺の大規模畝状竪堀へと、防御線の段階が順に立ち上がり、地形と遺構の対応関係を現地で追える城です。歩きやすさと構造理解の密度が両立しています。

主なルート
駐車場 → 弾正屋敷周辺 → 主郭部 → 出丸・捨曲輪 → 畝状竪堀外縁(周回)

所要時間
約1時間(城域周回)

アクセス・駐車場

  • 所在地:熊本県玉名郡和水町江栗田中城跡一帯付近
  • マイカー:九州自動車道「菊水IC」から車で約20分前後。和水町中心部から案内板に従って進むと、城跡周辺に2か所の駐車場があります。

トイレ:城跡周辺の公園施設やミニミュージアム付近にトイレが整備されている場合があります。開館時間や利用可否は事前確認がおすすめです。

現地レポート|ルートと見どころ

保存状態が良い連続平坦地

田中城の散策ルート図(反時計回りの想定)

今回は、反時計回りに進み、弾正屋敷らへんから主郭を目指します。

連続する平坦地の一部。幅のある郭が続く様子

圧巻ですね。この平坦地はなかなか他では見られません。

芝刈り後の郭面。段差が見えやすい状態
連続郭の眺め。曲線的な地形の流れが分かる

弾正屋敷前の階段を進みます。

弾正屋敷付近から主郭へ向かう動線図(引用図)
主郭へ向かう途中の郭。芝生面が広く続く
郭上からの眺望。周辺の農村景観が見渡せる

綺麗に見渡せます。眺めが良い。

郭配置と見どころ位置を示す図(引用図)
山城Q
山城Q

死地(キルゾーン)に立ってますよ

細長い郭(キルゾーンと感じた区間)。見通しが効く直線的な地形
細郭周辺の地形。左右の落ち込みが分かる

ここが一つの関門でしょうね。シラス台地なので崩れつつありますが、独立単郭の形が分かりやすいです。

主郭部

田中城の主郭部。広い平坦面が続く
主郭周辺の芝生面。段差と曲輪の境が見える

広い!

主郭の芝生敷きの様子。平坦で見通しが良い

主郭はきれいな芝生敷き。

出丸

田中城の出丸。郭端部の形が分かる
二の丸郭側から見た捨曲輪周辺。芝刈りで輪郭が出ている
土橋と空堀が確認できる区画。直線的な溝が走る

二の丸郭から捨曲輪を見ると、ここも綺麗に刈られており、土橋と空堀が確認できます。それにしても、ただの切岸ではなく、丁寧に小さな平坦地が設けられております。

出丸周辺の郭面。段差の連なりが分かる
主郭周辺の切岸と平坦地。外縁のラインが読み取れる

主郭周辺をぐるりと取り囲む大規模畝状竪堀

主郭周辺の畝状竪堀配置を示す図(引用図)
畝状竪堀の地形。並行する溝のリズムが見える
畝状竪堀の斜面。縦方向の溝が連続する
畝状竪堀の外縁部。段差が連続して見える

特筆すべきは、二の丸郭を半分囲むように巨大な畝状竪堀が施されている点です。横に進もうとしても遮られ、実際に登山靴で試しても簡単ではありませんでした。

畝状竪堀の連続部。溝と尾根状部分が交互に続く
畝状竪堀の斜面。溝の深さと角度が分かる
畝状竪堀の見下ろし。縦溝の並びが確認できる
畝状竪堀の末端部。地形の落ち込みが見える
畝状竪堀の横断的な眺め。溝が連続する
畝状竪堀の斜面。芝刈りで起伏が強調されている

何度見ても、「素晴らしい」としか言葉が出ません。形が維持され、遺構としての輪郭がはっきり残っています。

東側 段郭

田中城東側の段郭。段差が連続する平坦地
段郭の一部。平坦面と切岸の境が分かる

畑ではありません(一部は畑でしたが)。

整備された竹藪付近の段郭。視界が確保されている

この竹藪は意図は不明ですが整備されています。木を切って柵を立てれば、すぐに実戦に使えると思うほど遺構が残っています。

田中城の摩崖仏

田中城周辺の摩崖仏(岩壁に刻まれた石仏)
摩崖仏の別角度。彫り込みの形が分かる

火砕流堆積物は凝灰岩になるので、こちらにもこのような石仏が残されています。大分県っぽい。

この城の概要

田中城は、熊本県和水町に築かれた中世の平山城で、和仁氏の本拠として肥後北部を支配した拠点です。

天正15年(1587)の肥後国衆一揆では、豊臣秀吉の命を受けた加藤清正・小西行長らの大軍を前にしても容易に屈せず、最後まで抵抗した城として知られています。

丘陵上の広い台地を利用し、主郭・二ノ丸・出丸・弾正屋敷などを配し、周囲を土塁・堀・畝状竪堀で固めた縄張は、国衆の拠点としての性格をよく示します。現在は国指定史跡として整備され、遺構を現地で確認できます。

地形・地質のポイント

田中城周辺で見られるシラス台地の斜面
シラス台地

特徴は、このシラス台地。加工しやすい地形条件があり、土の工作で防御線を組み立てた様子が読み取りやすいです。

田中城周辺の地質図(引用図)
引用元:産総研地質調査総合センター,20万分の1日本シームレス地質図V2(地質図更新日:2022年3月11日) より山城渡りQが加筆・修正したものである (スマホで拡大可能)

地質を確認しても、ちょうどこの辺りは、火砕流帯でシラス台地。この土壌は、

山城Q
山城Q

阿蘇NO.4火砕流帯

阿蘇4火砕流堆積物の分布図(引用図)
引用:星住英夫・宝田晋治・宮縁育夫・宮城磯治・山崎 雅・金田泰明・下司信夫 (2023) 阿蘇カルデラ阿蘇 4 火砕流堆積物分布図.大規模火砕流分布図, no. 3. 産総研地質調査総合センターを山城Qが追記

のこの辺りの上限となります。あちこちに出てくる阿蘇NO.4火砕流帯。島原の原城~熊本城~竹田の岡城~大分の臼杵城などの築城に影響を与えています。この土壌があったからこそ、この城が出来たわけです。

この山城の魅力|3つのポイント

  1. 体験価値(ウェルネス)
    芝生に覆われた広い郭を歩きながら、ゆるやかな起伏と開放的な眺めの中で、歩くリズムが整っていく時間を味わえます。整備された動線があるため、初めてでも「歩く→見る→理解する」の切り替えが自然に起きます。
  2. 遺構の固有性
    弾正屋敷周辺の連続する平坦地や、主郭周辺を取り巻く大規模な畝状竪堀・土橋など、丘全体を丁寧に「使い切った」縄張りが見事です。歩行負荷が低いぶん、土の造形を落ち着いて追える城でもあります。
  3. 景観・地形の固有性
    台地上に築かれた平山城で、芝刈り直後は丘全体のラインが一望できます。畝状竪堀のリズムや外縁ラインが視界に入りやすく、防御線の組み立てを現地で掴みやすい城です。

周辺観光・温泉(地域共鳴)

周辺観光

  • 田中城ミニミュージアム(仮称表示)
    和仁氏や田中城の歴史、和水町の地域文化を紹介する小規模ミュージアムで、城跡見学とあわせて立ち寄ると背景がイメージしやすくなります。
  • 江田船山古墳・肥後古代の森(和水江田川カヌー公園一帯)
    装飾古墳や出土品を通じて古代肥後の歴史に触れられるエリアです。中世の田中城とあわせて歩くと、同じ地域の時間の層を追いやすいです。

山城帰りに立ち寄りたい温泉

  • 菊水ロマン館 周辺の温泉施設(例:菊水ロマン館温泉施設)
    菊水IC近くの道の駅エリアには、日帰り入浴が可能な温泉施設があり、田中城から車でアクセスしやすい立地です。

免責

本記事は、公開されている資料・現地看板・一般的な情報および筆者の現地体験に基づいてまとめたものであり、歴史・地質・効果を断定するものではありません。登城・観光の際は、最新の交通情報・気象情報・現地の案内に従って行動してください。

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